39ページ カレンダー用デスラー総統

82年のカレンダーを購入された方、あるいはファンクラブ機関誌48号を購読された方には見覚えのある絵だと思います。しかし、スターシャがいません。
絵としては、背景のイスカンダル星とガミラス星があって、そこに大判のセル画でデスラー総統が描かれています。カレンダーや機関誌の表紙とするために左側の宇宙空間に松本氏の描かれたスターシャの絵を合成しています。この絵も未公開という事になりますね。
背景のブルーが印象的で、それを見せるためにデスラーをいれるか、入れないか悩んだ末に、001-010にも同じ構成があるので、今回はデスラーを入れることにしました。デスラーファンにはたまらない一枚でしょう。

38ページ 赤色巨星

 不気味に暗い影を落として燃える星。青く若々しく燃えていた恒星の最後だと言われています。この地でどのような戦闘があったかは、本編ではカットされてしまっていたのでわかりませんが、私達の手元にある書籍で一番詳しいのは「ひおあきら」氏のコミックでしょう。
最後の「さらば~」の項目で書きますが、「ひおあきら」氏のコミックは、早い段階の絵コンテかシナリオを基に描かれているので、映画製作の最終段階で無念のカットにより消えてしまった「未公開シーン」も描かれていたりします。
今回は、赤色巨星編(?)を参考にされるといいと思います。
この1枚の赤色巨星が主張している物語性を感じずにはいられません。

真っ赤な絵の具に真っ黒な絵の具を、水張りの乾かないうちにたっぷりと、そして勢いよく混ぜ合わせながら(そして失敗は許されない!長年の経験と適量を筆から落とせる技術!)、しかしゆっくりと力無く燃える星を静かに表現しているこの1枚は、現代のCGでは、絶対に真似の出来ない表現です。
現在の映画において、CGは万能なツールであるかのように見られがちですが、劇場で見たときの迫力を1枚の止め絵として見たときに、最初に劇場で得られた興奮を再現されることは希です。なぜならCGは動いて見せる技術であって、止め絵として見せる技術ではないからです。
この1枚を見るためだけに本書を開いても価値は見いだせると思います。

5月20日追記
CGでの表現について私なりの思いを書かせて頂きます。
CGで「絵」を作るときには、大まかに分けて二つの方法があると思います。一つは、人間がツール(絵の具でも、写真でも、パソコン上のソフトでも)を使って描いた後に、テクスチャとしてオブジェクトに貼り付ける、あるいはCGソフトに渡して目的に合わせた計算をさせて変形などのエフェクト加える方法と、もう一つは、最初から必要な計算データを与えて起こらせたい事象をパソコンに計算させる、いわゆるシミュレーターのようなソフトを使う方法です。
いずれの方法にしても、商業ベースに載せるための方法としては、作り込むほどに時間と人件費等がかかってきてしまいますし、手書きというアナログの要素を入れ込むには、結果として複雑な計算式が必要であり、完全なシミュレーションなどは不可能とまでは言えませんが、なかなか難しいものです。
それ以上に、例えば、現在10万円程度で購入できるパソコンは、アポロ計画が実行された1961年の頃のコンピューターよりも遙かに性能では上回っていますし、秋葉原で数百円で売られているパーツは、当時のハードより遙かに高性能です。しかしながら私達個人は、月に行くまでには、まだまだ高いハードルがあり実現できていません。
オーディオの世界でも、192KHz、24ビットという高性能オーディオフォーマットを手に入れ、人間の耳では聞き取ることの出来ないような音楽を聴くことも出来るようになっています。音を自在に作り出す音源も企業の努力によって高性能且つ低価格化が進んでいて、1974年に富田勲氏が「月光」を発売した時よりもシンセサイザーの能力は数百倍も上回っています。しかし……。
私自身、CGで描かれた「アート作品」を多数見てきましたし、感動もしてきました。ちょうど「さらば~」を見た頃からパソコンには興味を持ち、色々なことに挑戦し楽しんできましたからパソコンの素晴らしさも知っています。
しかし、私個人として、未だにオーディオはレコードを楽しみ、パソコンでは、古い8ビットパソコンに愛着を感じている人間であり、レコードへ針を落とす瞬間に「この儀式はCDにはあり得ないな」とつぶやいているのです。
そんな人間が、ヤマトの為に描かれたイラストボードを見て深い感激を受けたのは、目の前にある現実感=絵の具で描かれたというリアル感と、そこに宿る繊細なテクニックです。
紙の余白から感じ取れる筆の勢い、絵の具の香り。一本一本の線に筆に込められた思いを感じ取られずにはいられません。そして、インターネットなどによって簡単に得られてしまう情報も当時は手探りで見つけだし、アイディアを詰め込んで描かれた「絵」が持つアイデンティティーは何物にも代え難いものです。
本書に選ばれた絵は、そんな基準もあったりします。

37ページ デスラー機雷

見る人が、ほぼ全員!驚嘆の声を上げる1枚です。
まず、絵が大きい。
そこへ、人間業とは思えないほどの量のデスラー機雷を描き込んでいます。
CG全盛期の現在なら、デスラー機雷のモデルを一つ。それを大量にコピーして、向きをランダムにして出力すれば画面いっぱいのデスラー機雷が、あっという間に出来上がります。
ところが、全部、手描き。
すごいです。
ず~っと見ていても飽きません。
さらに、よく見れば、戦闘空母の位置が悪かったようで書き直しです。恐らく陸地にかかってしまい、構図として良くなかったのかも知れません。ということは、戦闘空母も2回描いていることになります。恐るべし。
CG全盛期の現在なら、マウスで戦闘空母をつまみ上げて、「このへんかな?」といいながら、人差し指を放せば、移動完了です。
勝又氏の気力に感服です。

36ページ 新たなる旅立ち マザータウンの海

ピンぼけで遠近感を出した使い方や、雲をプラスして見え方を変えた使い方、戦闘中であったりと、かなり使い回された背景画です。
あまりにも黄緑色の都市(?)の光彩と、海の青さ、雲の透明感が綺麗なので掲載に至りました。
中央右寄りに折れ目が付いていますが、修正はしませんでした。
とあるアイドルグループの水着写真の修整写真がネットで公開され話題となっていましたね。恐らくアドビ社のフォトショップを使っているのだろうという噂が流れていました。実は、この書籍を作るにあたって基本的な作業はフォトショップで行いましたので、この手の折れ線なら撮影後に修正するのは簡単なのですが、30年以上前の背景画です。時間の流れを消してしまいそうだったので、やめることのしました。
(余談ですが、私の不手際で折ったわけではありませんので)

35ページ 英雄の丘

本編では、陽光の反射は、透過光処理でした。また、沖田艦長の後ろにあるモニュメントのトップが輝いていました。
眺望も良く、休日には家族連れでにぎわいそうな公園です。
「永遠に」では、メインクルーが階段を上って上がってくる様子が描写されていますが、「さらば~」の段階では未整備のようです。
宇宙ものの背景が多く、青かったり暗くなりがちな本書ですが、このように「赤」をメインにした「絵」が入ることにより見え方も変わってきますね。

34ページ 主砲付近から艦橋へ

初出は、豪華本TV「宇宙戦艦ヤマト」3冊セットの3巻目。扉についているポスターでしたが、古代とユキの2人がセル画で乗っていました。元々は「さらば~」ように書かれたと思うのですが、豪華本の発行が遅れに遅れたので、間に合ってしまったという感じでしょうか。豪華本用に描いたら、遅れたので「さらば~」に間に合ったということなのでしょうか。詳細は不明ですが、以後は「さらば~」関係の書籍でよく見たヤマトです。
 このイラストもご多分に漏れずトリミングして使用されていたので、第1主砲や第2主砲の砲身が切れているとは思いもしませんでした。

32,33ページ 第一艦橋にて祝福を受ける2人

祝福を受ける2人
 涙でスクリーンが滲んでいましたね。
 ブロンズ色になって現れる戦士たち。
 宇宙戦艦ヤマトは新撰組の影響を受けている作品だともいわれています。
 司馬遼太郎氏作「燃えよ険」(下)にて、土方歳三が五稜郭にて、いよいよ最後の時と覚悟を決めたとき、討ち死にしていった仲間が次々と現れては消えていきます。そんなイメージだったかも知れません。
 また、舛田利雄監督のインタビューを中心とした書籍「映画監督・舛田利雄~アクション映画の巨星 舛田利雄のすべて~」には、古代の最後のセリフについて書かれています。ヤマトについてはなんでも知りたい!という方には一読されることをお勧めしますが、作品の中の世界観を壊したくない方は、お勧めできません。私自身、知らない方が良かったかな?と思うときがありますから。
 いずれにせよ、映画のエンディングとして印象深い2枚です。
 余談ですが、001-033 とページ番号がふってある場所の余白を見ていただきたいのですが、案外、一気に筆を走らせるのがわかりますよね。さすがプロですね。
 

30,31ページ 動力炉 2種<訂正>

動力炉
古代達が動力炉を発見するシーンで使用された背景。恐らくイラストボード(原図)としても使用されたのではないかと思います。手にしてみるとかなり大きく引き込まれそうです。

動力炉を下から見上げる<訂正>
古代達が動力炉入り口を目指すときに「橋」を渡ったシーンでも同じように下から見上げたレイアウトがありましたがこれは全くの別物です。

以下訂正と追加です。
上映時間2:06:21(時間は初期DVDによる)にこの背景画が使用されているカットがあります。実際に使用されているカットでは、真田と斉藤が渡りきる橋が描かれていました。解説を執筆している段階では「橋」が見つからなかったので別ものと判断しました。が、よくよくみると橋を追加すれば実際に使用されているカットになりますので、未使用は訂正させていただきます。(私の言い訳:橋があるなしで見え方が全然違ってしまいました。すみません)

28,29ページ 都市帝国 2種

遺贈された美術ボードであっても、他書籍で多数露出されているものは、極力避けるように選別しました。
都市帝国もかなりの数がプリントされています。ですから、あえてロードショー別冊に収録されたものを選びました。
ただ、当時、ガスの描かれているセル画は健在でしたが、折れてしまっています。

29ページ目の都市帝国上部は、古代がヤマトに帰還してから砲撃を加えるシーンで使われています。
チューブカー(?)らしきものが(透過光で表現され)走り回り、手前には崩れゆくビル群がセル画で描かれていました。その時、ビル群から無数の光が輝いているのですが、この背景画自体に穴があけられていて、そこから光を当てていたようです。その穴をお見せできないのが残念ですが、いつかお見せできるように「都市帝国の透過光用の穴を展示する機会」を作りたいと思います。

26、27ページ テレサの肖像と地底湖

松本零士氏渾身の一枚。
宇宙の危機を伝える女神。反物質の身体をもつテレサの神秘的なまでの美しさを現している1枚。
まつげのハイライトまで丁寧に描き込まれている。そして、ここまで広く背景が描かれていることに驚きます。「さらば~」という映像作品の中で、テレサの存在をいかに表現するかが成功の可否を握っていたように思います。他の方の女性像ではここまで作品を神格化できなかったのではないかと思うと、松本氏の功績は大きさは測り知れませんし、スタッフとして参加していただいた采配には感服いたします。
このテレサの肖像には、神々しいまでの美しさがあります。
ステキな1枚です。

地底湖のイメージボード。
地底に湖があり、そこにテレサが幽閉されている。「さらば~」には驚きのギミックが多数用意されていましたが、これもその一つ。
幽閉といえば地下牢のイメージですが、中空に幽閉されているのですからこの発想も秀逸です。