78,79ページ ユキと古代

2人の出会いや成長を今更、私が語る必要ないと思います。宇宙戦艦ヤマトを見ていた一人一人の胸中に深い想いがりますから。
第一作目の最終回で「だって、古代君が死んじゃう!」とコスモクリーナーDを操作するユキ。「私には神様の姿が見えない」と嗚咽する姿に涙した人もいることでしょう(あ、想いをかいちゃった)。この2人が居て宇宙戦艦ヤマトのストーリーは成り立っていたのです。
「ヤマトよ永遠に」でのアルフォン少尉との邂逅。シャッターが閉まり退路を断たれた雪の前にゆっくりと姿を現すアルフォン少尉。命を助けてくれた恩人でありながら彼を撃たねばならない辛い決断。そんな極限状態へと追いやられる瞬間の一枚がこれです。
実にいい表情をしています。
もう一枚は、涙ながらに真田と斉藤を残して立ち去る古代。このシーンでは涙が止まらずスクリーンがよく見えなかったのではないでしょうか(デスラー艦内へと進むシーンと背景画がおなじですが許してください)。
当時の制作余談ですが、動力炉へ渡る橋を挟んで、真田が古代に「行け!行くんだ!」と叫び全ての音がミュートされるシーン。川島和子さんのスキャットが入り観客の私達は涙がとめどなくこぼれてくる。「さらば」の忘れられぬ名シーンですが、ここでスキャットを入れようと提案したのは音響監督の田代敦己氏だったそうです。いつも適材適所、いい音楽をつけてくださいました。
そして、復活篇のスペシャルアドバイザーという肩書きで、やはり音響監督的な立場で参加されていましたが、最後まで西崎氏に意見を言える貴重なスタッフでした。クラシック音楽を使うこと、戦闘シーンでの音楽の使い方を最後まで気にされ自分の意見をぶつけていた光景がいまでも思い起こされます。その西崎氏は田代氏から音楽をつけるタイミングや選曲を学んだんだと話していました。ヤマトは、ドラマ、映像、音楽。この3つが織りなすハーモニーによって出来ている作品ですから氏のは存在感は決して小さなものではありませんでした。
1枚の絵を見て、音楽が浮かび、セリフが浮かぶのは、宇宙戦艦ヤマトならではです。

77ページ クイーンオブアクエリアス C type

この絵の描かれた紙は、ページをよく見ていただけるとわかりますが、エンボスのかかったちょっとざらついた画用紙です。この絵はカメラでなくスキャナーで読みとりました。近年、PCを取り巻くハードウェアの環境は高性能且つ低価格化が進んでいて、ちょっと前は数十万円していたハードウェアが、数万円台まで下がっていることも珍しくありません。今回の書籍で使用したセル画や背景画の一部はスキャナーを使って読みとっていますが、水分を吸ってデコボコになっている絵も、ピントが狂うことはありません。試しに立体物をスキャンしてみましたが(顔とか手とかフィギュアとか)かなり正確に読み込んでいます。作業用のPCですら、マルチコアでCPUは2つ装備され、それぞれがハイパースレッディングテクノロジーを採用していますから実質4つのCPUが機能しているかなり贅沢な作りです(といっても今では入門機ですね)。メモリーも4Gほど積んでOSもつけて、ブルーレイの記録までできて5万円を切っているのですから、凄いものです。
最新のハードで、30年前の作品を取り扱うというのはなんとも不思議なものです。
さて、本題に戻りますが、このアクエリアスは解説の部分で「チラシに使われているものは裏焼き」と記していますが、他の資料を見ても裏焼きで使われているものが殆どでした。そして、このクイーンオブアクエリアスも、ご多分に漏れず似たようなコンセプト(淡い水彩画のようなブルー)で描かれた作品が何点かあります。微妙に表情が違っていて、一番、優しそうな表情をしているイラストを採用しました。「愛とは決して甘美なものではなく」と語りながら惑星を水没させてしまいます(ディンギル星のように大爆発してしまう星もある)。綺麗なバラには棘があるということですね。
氷のように冷たい表情の中にも、強さと優しさの同居するこの絵が一番ステキです。