89ページ スターシャ

このスターシャを見たときの衝撃は未だに忘れられません。モノトーンだと思われていた宇宙が水彩画で滲んでいてホントにロマンチック!スターシャがちょっと艶っぽい!。ジャケット自体が芸術的な出来上がり。「20世紀の白鳥の湖」なんて書いてあるし!ライナーノートは全然アニメしてなくて大人の雰囲気。このライナーノートは、黒だからポテトチップスを食べた手で触ると油がついて光ってしまうし(「Proud of YAMATO Visual Book」のカバーも指紋がベタベタ付きます!)。
私は、このレコードを5枚買いました。レコードを壁に掛けるための専用のフレームを買ってきて部屋に飾っておいたのを思い出します。レコードは、聞きすぎると溝がすり減ってしまいますから、遠い将来もいい音で聞けるようにと大切に保管していました。それから10年後にCDという規格が生まれましたが、やはりジャケットが小さいためか、初めてこのスターシャを見たときのような興奮は覚えませんでした。(レコードは、いまでも聞いています。針を降ろすまでの瞬間が何事にも代え難い行為です。冬は、カートリッジの可動部分が少々硬くなるので、気持ち針圧を上げたりするのもちょっとしたテクです)
「しーきゅーななまるまるいち」「しーえすななまるいちいち」とレコード番号を覚えたのも、この2枚が初めてです。
このスターシャ+ヤマトのジャケットに胸がキュンとした人は多いのではないかと思います。
今回は、描いてある隅から隅まで全部を見ることが出来ると思います。「生きているといいことがあるな」と思わせる至高の一枚だと思います。
ヤマトが描かれていないのも驚きですよね。
余談ながら、ヤマトネタをもう一つ。「永遠に」でポスターとなった、ほぼ正面から見たヤマトですが、セルが2枚になっています。めくってみると、尾翼や主翼、その他ハリネズミのようにとがっている部分が描かれていなくて、なんとも寂しいヤマトになっています。後から足してるんですね。

88ページ サーシャ

悲劇のヒロイン、サーシャ。父である守の死を知らずに健気に古代と語り合うシーンも良いのですが、運命を受け入れて偽の地球に残るこのシーンも、サーシャの存在感を示す1枚として重要だと思います。
その他、印象に残るシーンは、ラストでスターシャの胸に帰っていくシーンですが、宇宙にセル画を載せただけではとても味気ないものです。そこで透過光と特殊処理の施されたフィルムから掲載しようと考えましたが、35mmフィルムの撮影済みフィルムは使わないという本書の趣旨に反してしまうのであきらめました。(透過光を利用したシーンで印象的に残るシーンは、今後何らかの形で本に出来ればと考えています。例えば「さらば~」では、テレサのシーンでの透過光が効果を上げていましたね。「永遠に」のラストのサーシャとスターシャも鮮やかでした。それにLDボックスでのジャケット絵も透過光が指定されていたことも忘れてはいけません。透過光はヤマトの代名詞ですからね)
サーシャは、この1作のためだけに登場した(聖総統やサーダもそうですが)主人公の存在も脅かすほどの魅力的な女性でした。ヤマトシリーズの女性を担当することとなった高橋信也氏の代表作ともいえるキャラクターでしょう。

87ページ アルフォン少尉

「まだ、動いてはいけない」の第一声が魅力的でした。
格好良かったです。野沢さんの声が、これほどマッチする、いや野沢さんの声をイメージして作ったキャラクターとしか思えないほどマッチしていました。解説にも書きましたが、このカットは2回使われていて、最初はピンぼけから始まっていました。ピントが合ってからマジマジと見ると女性にはたまらない(平成の流行語でいう)イケメンだし。
肌の色がガミラスの青、白色彗星帝国の緑とピンクだったこともあり、ビミョーな色になっていますよね。紫でもないし、グレーでもない。青でもない。髪の毛は、ヤマトシリーズ共通の金髪であることは、見逃せません。
「ヤマトよ永遠に」も、公開当時の秋に26分割して、細部のドラマを作って見せてもらいたかったです。パルチザンの戦い、古代とサーシャの愛の行方、そして、ユキとアルフォン少尉のラブロマンス。(過日、本の制作を手伝いに来てくれたヤマトを知らない女性に「永遠に」のストーリーを掻い摘んで説明したら、昼ドラマよりもドロドロした内容であることに驚いていました。地球に残された古代の婚約者ユキは、敵の将校に捕まってしまい愛を告白され、人類のために愛を受け入れるか迷う。地球を離れた古代は、同乗した姪っ子に愛を告白され苦悩する。艦長は戦闘中に負傷し感情的になった古代は、敵の本星を波動砲で撃とうとするが姪っ子が残っていて撃つことが出来ない。そのころ、地球では、アルフォン少尉とユキが敵味方に分かれて対峙してしまう。さて、どうする?という内容は、まさに昼ドラ)
「永遠に」の代表として、この絵を1枚セレクトしました。「永遠に」から背景美術も撮影技術も格段に向上し完結編で昇華していくわけですが、ヤマトを「さらば~」までとするファンとは、違った方向でも楽しめるので微妙なところです。「永遠に」への橋渡しとなったヤマト2がなければ、2009年の「復活篇」すらなかったのですから不思議なものです。

86ページ 白色彗星帝国見参!

この絵こそ、まさに「さらば宇宙戦艦ヤマト」!ですね。堂々たるズォーダー大帝に、宇宙で最強の帝王としての風格を感じます。これだけの強敵を前にヤマトは、古代はどうやって闘うのだろう?と思いめぐらせたものです。
あの夏の日、徐々に露出が増えてくる「さらば」の情報。それが「絵」であったり「文字」であったりで心躍らされたものです。
作品を表現するキービジュアルは、アニメ雑誌などに幾度となく掲載されたので採用しない方針の「Proud of YAMATO Visual BOOK」ですが、この絵だけは別格です。湖川氏の力の入ったデッサン力に目を奪われます。
また、背後に飛翔している空母や艦載機は、蒼い宇宙空間に写真を切り抜いて貼り付けてあります。恐らくセル画に描かれたものを写真用のカメラで撮影し、縮小プリントして(サイズから縮小サイズを計算して!)貼り付けています。ここは、カメラマンや現像スタッフ(?)の腕の見せ所です。
また背景の宇宙は、水色に近いほど明るく、雑誌などで見ていた絵が頭の中に残っているので違和感を持ちます。ロードショー別冊では、本書よりも更に露出を落として暗く撮影しています。ズォーダー大帝のコスチュームが背景の真っ暗な宇宙に溶け込んでいると思います。恐らく、敵の不気味さを出すために「暗くしろ」と指示を出したのではないかと思います。
PCが発達している現代では、例えばフォトショップやイラストレーターなら、バウンディングボックスがキャラクターに付いていますから、四隅のどこかをドラッグすれば、画面の中で拡大、縮小が自由自在です。
当時のアナログ全回だった頃の苦労が偲ばれます。

84,85ページ デスラー総統

「さらば~」において、デスラー総統の担った役割は決して小さくはありません。
「あのデスラー総統が生きていた!」というだけで驚き、ワクワクして見ましたが、決して(この作品では)主人公にはなれない存在でした。しかしながら、最後に放った一言、悟りを開き改心(?)したかのような行動に「死なないでくれぇ!」と涙したのは私だけではなかったでしょう。
このエピソードが元でデスラーの新しい方向性が確立されます。「宇宙戦艦ヤマト2」を経て、新たなる旅立ちへと昇華(宇宙戦艦ヤマトⅢ、デスラーズ・ウォーは別として)します。西崎氏は「新たなる旅立ち」を「宇宙戦艦ヤマト 新たなる旅立ち デスラー編」と呼んでいました。この件については、後日、発表の機会を見つけます。
また、デスラーの登場は、この「さらば~」の世界観をより深いモノにしたと思います。デスラーとの一戦で深く傷ついたヤマトとユキ。しかし、デスラーの今際の言葉が難攻不落と思わせた白色彗星帝国戦への糸口へと導くのです。今回は、デスラー総統の勝利を確信して母艦を進める凛とした表情。腹心の部下を失って落胆する表情。正にデスラーの生き様を如実に表す2枚をセレクトしました。
実は、タラン将軍の超格好いいショットもありますので、次回(「Proud of YAMATO Visual Book BL」をお楽しみにしていてください。

83ページ 土方と古代

ロードショー別冊などではお馴染みの、古代が土方に艦長就任のお願いをするシーンですね。
ヤマトは、艦長不在のまま出港してしまったので、当然、艦長が必要になるのですが、このシチュエーションを考えついた制作陣の物語の組み立てには頭が下がります。
物語の途中から艦の責任者=艦長を乗せるというのは、なかなか難しい展開だと思います。
古武士的な土方艦長の熟慮に熟慮を重ねた末の判断。古代達を説得して地球に引き返すオプションもあったでしょうが(敵の強さを身をもって知っているわけですから)、そのまま艦を進める決断。自らの進退問題も含めての重大な責任。それらのストリーの流れを汲んで、古代を横に遠くを見つめる土方の表情が全てを物語っています。
この1枚の絵の持つ重みは「さらば~」の中にあって貴重なモノだけにカットされてしまったことが惜しまれます(と思います)。(土方の心情とバックグランドは、艦長席に着いたときの意思の表明で現れていますからカットされてしまったのでしょうね。舛田監督は、ホントばっさりと切りますね。復活篇の時もそうでした。脚本の決定稿を一旦持ち帰って、次の会議の時に自身がカットした脚本を持ってきたのですが、これが情け容赦のない切り方で、西崎監督を初め脚本家の皆さんも絶句するほどでした。私は、舛田氏がカットした脚本を、そーっとコピーして今でも隠し持っています。その理由は、後ほど)

82ページ 土方とユキ

このカットは劇場未公開カットです。
土方艦長を「ゆうなぎ」から救出し、手術を終えてからのシーンとなります。第一艦橋で古代の状況報告があって、その内容を病室でモニターしているというシーンです。次のページの古代と土方は、その流れを受けてロードショー別冊でも使われていたので、ご覧になられた方も多いと思いますが、本カットを目にされた方は少ないと思います。ひおあきら氏のコミックの中には描かれていましたが、本編と同じ絵でみることが出来るのは「さらば~」ファンとしては嬉しいことです。
ヤマトの資料の中には「さらば~」の未公開、NGカットのフィルム(35mm)があって、タイミングが合わなかったカットや、いま見てもこれはNGじゃ?と思われるようなカットもあります。テレサが幽閉されている地下空洞から現れるシーンでは、テレサの後ろから発せられる光(後光?)が円を描いて現れたり、棒状に放射されたりといったテストショットも存在しています。そして驚くべきは、幻のラストシーンとも呼べるカットが存在していたことです。現在の制作システムならオールPCですから、映像のファイルにタイムスタンプといって日付、時間が記録されているのですが、フィルムになってしまうとそれがいつ現像されたものかわからないので、知る手がかりがなく悔しい思いをしています。貴重なフィルムななので「Proud of YAMATO Visual BOOK GD」にて公開できればいいのですが。(フィルム缶には、撮影、現像所から必要な情報が書き込まれたメモが入っていたり、ラベルが貼ってあるのですが、細切れに押し込まれていると、もうなにがなんだかわかりません。
ユキがしっかりとフォローしているのがいい絵ですね。