55ページ 燃えるウルク

 私が特に気に入っているウルクのイラストです。この絵も当初はイメージボードと思われていました。冷たく光るコントロールタワーと猛烈に吹き出すエネルギーの威力。そして、この描き込み。タワー上層部は青白く、下層へいくと燃えるような空気に包まれる描き分け。そのウルクの岩盤から飛び出すエネルギーの力強さに見入ってしまいます。と思いつつ、確認のためにウルク戦を眺めていたら衝撃的な映像が飛び出してきました。古代達コスモタイガー隊が、コントロールタワーを爆撃するために、ほぼ垂直に降下するコクピットからの映像の、ほんの一部として使われていたのです。
 実際の映像をご覧頂くとわかりますが、殆どがコクピットの計器類で隠れています。キャノピーもこの名画としての光彩を遮る役目を担っています。さらに金田爆発がコントロールタワーの周囲で噴煙を上げているので、コクピット、噴煙の両者によって殆ど見ることが出来なくなっています。
 これが劇場クォリティーの恐ろしさです。これ程までの力を集結して作られているのが劇場版ヤマトの底力なのでしょう。
 この1枚を眺めているだけも充分に満足できるのは私だけでしょうか?
 余談ですが、復活篇の制作時にも背景美術が手前のbookで殆ど見えないというシーンを「目撃」したのを思い出します。
 ある日、いつものように制作スタジオに足を運ぶと、会議室でとある方が用紙を何枚も張り付けて大きな紙を作り、アマールの街並みの俯瞰を徹底的に描き込んでいました。いわゆる原図というやつですが、実際のアマールの街はないにも関わらず、その方の頭の中には航空写真があり、それを見ながら描き込んでいるかのごとく、丁寧且つ素早く描いていきました。
 あまりの迫力に気後れしながらも「こんなに描き込んで、もったいなくないですか?」と愚問をぶつける私に、その方はこともなげに「これが劇場用の面白いところだよ。おお!すげぇ!こんなに描いてある、でも一瞬で終わっちゃう。それが劇場用!それがいいの!」と言い放ちました。
 ここにプロとしてのプライドを見た気がしました。劇場へお金を払って見に来てくれる人を満足させるためのプロとしての意地。そのシーンは、アマールの市街地を上空から爆撃するするコクピットからの光景です。縦横無尽に動き回る爆撃機のためにかなり広範囲に背景画が描かれていることを「動き」から確認してみてください。私の記憶が正しければDC版では、短くカットされているので初期に公開された映像でご確認いただいた方が良いかも知れません。本当に画面に現れるのは実際に描かれた数分の一です。

55ページ 燃えるウルク」への2件のフィードバック

  1. ヤマパでこのビジュアルブックを購入しました。
    もしかして、私がウルクがいちばん好きといったら熱弁をふるってご説明くださった方と同じ方でしょうか?その節はありがとうございました。
    次のページのウルクがたしか徳間のレコードジャケットと同じ絵だったと思いますが、すごくお気に入りでした。
    ウルクはテーマ音楽とのシンクロ度がすばらしかったのもよく覚えてます。
    ヤマトの敵のデザインでは私の中ではナンバーワンに好きですね。
    このビジュアルブックは余白部分も見せていただいているので、さらに絵の迫力が伝わってきます。
    持って帰るのがちょっと重かったですが、貴重な本が買えてうれしかったです。
    ありがとうございました!

    • こんにちは。

       そうです。あの時、赤いネクタイをして黒いスーツを着ていたのが私です。
       「ウルク」を指名して下さった方は初めてでしたので、とても嬉しくページをパラパラめくってしまいました。
       これからも是非「ウルク」を応援してください。
       いいことがあるかも知れませんよ。
       お買いあげありがとうございました。

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