71ページ ディンギル帝国軍巨大戦艦

巨大戦艦です。この戦艦も70ページロボットホースで書いたように、このままのディテールで動いてくれたら、どれほど不気味で存在感があったことか。それとは対象的にハイパー放射ミサイルは、異様に大きさを表現していましたね。黒光りするボディーと怪しく光る先端部分。発射した瞬間はヤマトと同じくらいの大きさかな?とも思える程でしたが、ヤマトに突っ込んだときの小ささは「あれ?かなり小さい」と驚かされました。CG無くしてもあそこまで出来る技術があったということでしょうが、この巨大戦艦にも欲しかった演出です。実際はセルにべた塗りで、さらに動きがあまりありませんでしたから。
ちなみに先端はクルクルと回転するガトリング砲だったようですが、作画が間に合わなかったのか、動かす必要なし!と判断されたのかは不明ですが固定されたままです。(実際にもありますよね。本来なら……っていう但し書きの付くときが)

70ページ ロボットホース

しなやかに駆けめぐるロボットホース達。ヤマトの甲板上は敵味方入り乱れての接近戦になりました。その中で、ひときわ目を引いたのは白馬の王子(58ページ 大魔人参照)でしたが、山腹から勢いに任せて猛進してくるロボットホース軍団も迫力がありました。
デザイン的にも描写的にもマッシブでありこの絵のまま動いたら相当な威圧感があたと思われます。70mm版の白馬の王子様は、ルガール大神官大総統が乗馬する直前までBOOKでしたが、鞍に跨った瞬間からセル画に変わっていきました。これが現在のCGを使った演出でマッシブなまま甲板を駆け回ったら!と思いを巡らせらせてしまいます。銃撃戦にならずとも、そのまま体当たりされてもかなりのダメージを受けそうでコワイです。危うし!ヤマトクルー!(ヤマト・クルー?)

69ページ ウルク側面

ウルクを俯瞰した絵は沢山存在しています。前から、後ろから、仰ぎ見る構図まで様々です。しかしながら、このように間近で山頂まで描かれた絵はなかなか見あたりません。
元々ディンギル星は水のない星(大量の水とディンギル星の特殊な構造が災いをして星が吹き飛んでしまうほどのエネルギーが生まれた)ですから、地表は砂漠と化していた事は想像に難くないと思われます(アクエリアスと同根の人類なら生物には水が必要な気もしますが、最低限の水しかなかったのでしょう)。砂漠というよりもグランドキャニオンのようにひび割れた岩肌が剥き出しです。
そして山頂には、ディンギル星人達の拠り所であり信仰の本山であった神殿があります。地球人類(というか欧米人)の祖先という設定を如実に現していますね。

このディンギル星人の起源や最期を考えるとやるせないものがあります。アクエリアスの回遊によって水没した地球から逃れディンギル星に新天地を求めたにも関わらず、再びアクエリアスの水害にあい長く住み慣れた星が消滅してしまいます。更に、生まれ故郷の地球に戻ろうと進路を向けますが、それも果たせず。ひとえにこの民族の生き様が自己中心的であり周囲のことなど一切考えない我が儘な性格に寄るところが大きく、ある意味で自業自得なんですが。
ブッダ的な思想で古代は共存共栄を提案しますが、トチ狂った大神官大総統の手によって拒否されてしまいます。「弱い女子供など滅びて当然!」と喝破していたところで、この民族は終わっていたのかも知れませんね。ただ、最期にハイパーデスラー砲で粉砕されたのはルガール総統の近くにいた戦艦ですから、生き残りが居た可能性もあります。デスラー総統が吉備団子を差し出したことを願います。

68ページ エネルギー吸収プラント

エネルギーを吸収するプラントです。採掘ではないんですね。
やはりこの絵も「美女と野獣」と化しています。柔らかい蒼天を汚すかのように不気味な建造物がそびえ立っています。
空に浮かぶのは巻積雲(けんせきうん:上層5000m~13000mにできる)と層積雲(そうせきうん:地表付近~2000mにできる)です。なぜここで雲か?とうと、描く人にもよりますが絵の雰囲気を重視して存在するはずのない雲を描いてしまう事があるからです。映画「千と千尋」で千尋が畑の中に迷い込むと、そこはインゲン畑の中だとわかります。それはインゲンの苗は勿論、インゲンの育て方が実際に使われている方法で描かれているからです。リアリティーですね。
アクエリアスは美しく、空は晴れ渡っているとわかっていても、では実際にどんな雲が浮いているのか?ということになったとき本来は低層で発達するはずの雲が高層に描かれていたりしては興ざめです。
軌道近傍にある惑星を水没させるときは、どんよりと曇った空模様となり、最終的には雷鳴が轟く嵐になります。古代が乗組員を説得するときの状況が、まさにその時で、ヤマトの行く末も暗示していました。

空と建築物の対比が美しい1枚です。

66、67ページ アクエリアスへの眺望2種類

66ページは、カットとしては存在していますが、使われなかったセットです。アクエリアスが最初のワープをするのを確認する為にルガール・ド・ザールが立っていましたが、違うアングで描き直されています。
これらを含めて、ウルクとアクエリアスが同じフレームにはいると「美女と野獣」のようになります。音楽面でも、幻想的な水惑星アクエリアスには透き通るような女性スキャット(ボーカリーズというかもしれない)をフィーチャーした曲を使い、惑星ディンギルから脱出した都市衛星ウルクには、地の底から響いてくるような野太い男性コーラスが壮絶な歴史を歌い上げます。この対比が完結編の面白さの一つだと思います。あの上映時間の中に、敵と味方、親と子の対比を書き出しただけでも密度の濃さが伺えます。
他にも、カットナンバーがふってあるセル画や背景画がありましたが、本編で確認すると全然違っていたり、一部が違っていたりすることが多々ありました。
アクエリアスに関しては、かなりの枚数があり、例えば「宇宙に浮かぶぼんぼりのよう」といわれるシーンを表現するためのセル画が連続で残っていたりします。それれは幻想的なセル画の連続です。
67ページのイメージボードは、アクエリアスの美しさが抜きん出ている一枚です。

65ページ アクエリアスの浮遊大陸

右上にカットナンバーが描かれていますから背景画です。ですが、ヤマトがアクエリアスの地表を航行する際に使われたのは違う絵でした。DVDで確認すると、浮遊大陸の下のゴツゴツが本書よりも激しくなっています。おとなしい感じだったのでNGになったのでしょうか。
遙か彼方にはアクエリアスのリングが見え、同じように浮いている浮遊大陸も見えます。雲は穏やかにわき上がり、春を思わせる空色は優雅であり平和です。未使用としてお蔵入りするにはもったいない1枚です。
浮遊大陸から、莫大な水量が滝となって落ちています。その水はどこからわき出て居るんだろう?と想像させてしまうところに面白さがありますね。
まさに神秘の星アクエリアスです。

さて、完全に余談ですが、この浮遊大陸と同じモノを約30年後の2009年に劇場で見ることが出来ました。ジェイムス・キャメロン監督作品「アバター」です。これには正直驚きました(もっとも浮遊大陸という考え方は古くからありました)が、雰囲気が激似でした。
おそらく私の勝手な推測で妄想で、J・キャメロン氏には迷惑な事かも知れませんが、水惑星アクエリアスの存在を完結編で知り、近傍の惑星を水没させるときに一緒に流れ出た=それが惑星パンドラ(アバターの舞台となった星の名前)なのだ!と設定したのではないでしょうか。(すみません)
(完全に私の妄想です)となるとヤマトが自沈して水柱を断ち切りはましたが、一部は地上に流れ着き、復活篇の映像のどこかで、浮遊大陸が地球上で浮いている映像を確認することができるかも可能性がありますね(嘘です。ありません。念のため)。

64ページ 冥王星基地の宇宙灯台

冥王星海戦が終わり、負傷者は地球に帰り、ヤマトは新たなる戦地へ赴く印象的なシーンです。当初描かれていた絵コンテには、ヤマトへ航海の安全と武運を祈るモールス信号が発信されていました。おそらく尺の都合で削除されたのでしょうが個人的に是非とも見たいシーンでした。
この絵は、地平線を画面と平行に描かず、左側に傾けて描いているところに構図の面白さがあります。隆起した地殻を挟んで大小のクレーターがあり、荒涼とした酷寒の大地を「ざらざら」した質感で表現しています。バックの宇宙は、透明感ある色合いで「めらかな」質感を表現していて、地表との対比が際だっています。水張りをしてしっとりと描いた宇宙空間と極限まで水気を抜いた筆の戦いともいえるでしょう。
大気がないので遙か彼方の地平線もくっきりと見える宇宙空間が見事に表現されています。
地表の水気が一切なさそうな(パート1では海があったけど)筆運びに感服です。
部屋に1枚飾っておくとお洒落な1枚ですね。

63ページ 秘密ドッグのヤマト

この1枚は勝負の1枚です。本書の存在理由にもあたります。
余白まできっちりと収録できる絶妙なバランスで配置できました。本書の解説でも書きましたが、とにかく使われた部分が少なく、全体像としては見ることができません。いくつかの書籍でも紹介されていますが、大きくじっくりと見られるのは本書が初めてではないでしょうか。右手前の桟橋部分では、長年(?)海水に浸かり生えてきた藻やこびり付いた汚れを感じさせますし、船との間につけられたライトの照り返しがうまく表現され暗いだけのドッグの中でアクセントになっています。
当時、こういった重厚感のある絵は、勝又氏の独壇場となっていましたね。
海底ドッグのシーンは何枚かありますが、見て納得できる一枚をセレクトしました。
ちなみに、今回のヤマトの桟橋へのつけ方は「出船(でふね)」と呼ばれるつけ方になります。「出船」とは、入港して桟橋につけるときに、くるっと回頭してすぐに船が出られるようにつける方法をいいます。逆に頭から入れることを「入り船(いりふね)」といいます。自動航行で帰ってきたとなると、かなり高等な技術で船を桟橋につけたことになります。
映画のシーンとしては、入り船で停泊していたのでは、出港時にお尻から出ていくのでサマになりませんよね。
よく見るとアンカーもおろしていて雰囲気を盛り上げています(001-060では両側のアンカーをおろしていますよね。こちらでは左舷のみです)。
手前にガントリーレクーンもいい感じです(001-060と位置関係を確認してください)。この巨大なガンとリークレーンは、終始背景に出てきます。
「さらば~」の時のようなドライドッグではなく、海に浮かんだままというのは、戦艦大和を意識してのことでしょうか。
「やっぱりフネは海の上だよな」と古代も言っていましたし、ヤマトが海に浮かんでいる様子は絵になります。
実際の映像では、古代がタラップを上がっていました。

62ページ デスラーズパレス

この絵の面白いところは、完全にデスラーズパレスが崩壊しているのではなく、栄華を誇っていた頃の面影が微かに残っているところにあります。
そして、鉄壁の守りを誇る外殻の無惨な姿や、都市に淡く灯った明かりは、行く末の短さをも物語っているように思います。銀河の交差のすさまじい破壊力を見せつけていて映画のつかみとしては、最高の演出でした。ただこの銀河の崩壊も、デスラー総統が終盤で登場する件にしか活かされていなかったのが残念です。地球水没時の演出として使えれば良かったのですが。

この絵を初めて手にしたとき「(手前の外殻が書かれているセル画が)汚れてるな」と思いました。撮影時に汚れは極力落としたのですが、うまく落とせずそのまま重ねて撮りました。ですから、下に描かれているデスラーズパレスとその城下町(?)がくすんでしまうなとあきらめていましたが、カメラマンの腕が良く鮮やかに再現されているのを見てホットしました。外殻は、別に撮影して「ご自身で配置して欲しい」としても良かったのですが、ページの都合上載せたままになっています。外殻を外してみる朽ち果てたデスラーズパレスもなかなかの味わいです。

余談ですが、この絵の撮影後に判ったことがあります。撮影をする前は、毛のついたハタキのようなもので埃を取っていました。イメージボードや背景画にはこれでいいのですがセル画でこれをやると傷が付いてしまいます。長年セル画を保管したことのある方はわかると思いますが、表面についた当時の油分(?)や汚れ、重ねた部分のスレで透明部分が汚れてしまうことがあります。これを強引に取ろうとするとセル画に傷が付きます。
しかし、セル画を何度ゴシゴシ拭いても傷が付かない魔法のようなクロスがありました。不織布のような素材で使い捨て。小さなポケットティッシュのような形をしていて、しかも格安。元々は、カメラのレンズ等を拭くティッシュ(クロス)なのですが、効果は抜群!セル画の指紋取りやスキャナーのガラス面の汚れ取りに大活躍です。
さらに嬉しい効果が!なんと本書「Proud of YAMATO」のソフトカバーは、黒のPP加工で手に付いた油分で指紋がベタベタになりやすいのですが、このティッシュペーパーで拭くと、簡単に綺麗になります。是非ともご利用下さい。商品名は後ほど書きます。
最後に、デスラーズパレスは、デスラーパレスと設定資料に書かれていることもあります。

61ページ 父と子

ディンギルの実の親子でありながら血も涙もない(父が子供の失敗を許せず殺してしまう無慈悲さ!)関係と、血の通っていない沖田と古代ですが本当の親子のように時には厳しく時には愛情を持って接する関係を見せている完結編(ラストでは子の将来を考えて親が身代わりになって往く)で、死んだはずの沖田艦長が現れるという衝撃的なシーンです。
死んだと思われていた沖田(父親)がクルーの前に現れ(冷静に部署につけるものでしょうか?)的確に指示を出していき、最後に古代(子)へ戦闘指揮を執るよう命じます。
この絵は、いわゆる「宣材」と呼ばれるもので、宣伝用に作られたカットの中の1枚で、実際に使われたカットとは違う絵になっています。具体的には、背景、古代の立ち姿、沖田艦長と全て「似て非なるもの」となっています。是非とも本編と見比べて欲しい1枚です。
アニメ雑誌などで見ていたこの1枚は、本編から抜粋した絵ではなかったのですね。

余談ですが、「復活篇」でプロモーションDVDが限定配布されましたが、その時は、それまでに仕上がっている絵を集め、その上で必要なカットを予定より早めて作り上げてDVDにしました(プロモーションDVDに一旦は採用されたものの劇場公開版では削除された幻のシーンがありましたが、DC版で復活したカットもありました)。あとで書かせていただく機会があれば触れますが、プロモーションDVDは、プレゼントの受け付け開始後早々に予約数をうわまりそうになり、当日の夜に慌てて受付を中止しましたが(ホームページも「申し込み終了しました」の表示に変更し、受付の機能自体削除したのにも関わらず!)間に合わず、早朝まで延々と申し込みメールが届くという異常事態になりました。ヤマト人気恐るべしの一夜でした。