60ページ 地球防衛軍秘密ドッグ

なぜそうしたかはわかりませんが、ヤマトも、その横に係留されている白い船も、セル画の上に載っています。ですから、セル画を取れば無人のドッグになります。
原版だと横長のワイドで迫力のある1枚です。
この絵は真田やユキが自動航行で帰ってきたヤマトへ乗り込む前に車で駆けつけるシーンで使われました。判りづらいですが猛スピードで走り込む車が描写されています。35mm版、70mm版の両方で使われています。ヤマトの細かい部分まで描かれていますから70mm版のスタンダードサイズ(LDやVHS)でご確認いただけると思われます。
このよう海面に浮かぶヤマトを見るのは、「新たなる旅立ち」の出航前以来でしょうか?

59ページ 岩盤反重力波抽出機

おそらく中央のリングにしか目がいかなかったかと思いますが周囲の描き込みは相当なものです。
特殊効果がとても綺麗でしたね。実は、この絵は縦方向にも長いのですが上と下の(本書では白い余白となっている)部分がかなり汚れていて、お見苦しかったのでカットさせていただきましたが、おそらくご覧になられると「すごいゴミがついていますが」と苦情を受けそうなほどでした。
さて、この絵も大きいので、そこに乗っているセル画も大きいのです。よく見ていただくと理解できると思いますが、クルクル回る中央のリング(曲線反重力波増幅放電板というのかな?)の手前になる部分におへそのような突起もBOOKとして乗っているのです。
これほど大きなセル画を何枚も乗せ変えて撮影する時の苦労が忍ばれますよね。
今回は、中央のリングが緑色ですが別セルとして白色に輝くセル画もあります。

58ページ 大魔神

58ページ 大魔神
大魔神と都市衛星ウルクの絵は比較的多く保存されていていろいろなアングルから楽しめます。今回は、グリーンの光彩が際立つ1枚をセレクトしました。この絵は古代たちが潜入(乱入?)するシーンでつかわれています。保管(?)されているロボットホースが全て「白馬」なのが残念です(白馬はルガール・ド・ザール専用で1頭だけではないのでしょうか?それか権力に任せて複数頭所有なのでしょうか?)。
余談ですが、スタッフから聞いた話として『白馬の王子事件』というのがあったようです。当初、ルガール・ド・ザールも一般兵と同じ茶色のロボットホースにまたがっていたようですが、それを見た西崎プロデューサーが「これじゃだめだ。(馬を)白にしろ」とリテーク指示をだしたそうです。すこし経って白馬にまたがるルガール・ド・ザールができあがり、これを見て「これじゃ白馬の王子じゃないか!誰だ!白馬にしたのは!」と怒鳴ったとか怒鳴らなかったとか。忙しいプロデューサ家業ゆえ、自身の指示を忘れてしまったのでしょうか?
このシーンを見ると「白馬の王子」を思い出してしまいます。この絵を見る限り馬は最初から白かったような気もしないでないですね。

56、57ページ ウルクに突入するヤマト

この絵は、ポスターにLPのジャケットにと大活躍したボードです。雑誌などでもたくさん使われましたので見覚えのあるファンは多いでしょう。
今回の「Proud of YAMATO」の基本コンセプトとして、劇場公開当時、定番となっていてる図柄は使わないことにしていますが、この絵だけは別格ですから当初から採用を決定していました。とにかく大きい!その上、その大きさにかまけることなく(憑りつかれたように)どこまでも妥協することなく都市の線を一本一本丁寧に筆を入れています。丹念に描かれた都市像はまるで実在していたかのように、その威容を誇示するかのように迫ってきます。
実物をご覧になれない方のために、56ページでは、全体像を。そして、57ページでは実寸でのレイアウトに挑戦しましたが、あまりにアップになりすぎて「ここは都市の一部のようだけど、どこ?」という状態になってしまったので、あきらめて倍率をすこしあげてみました程度で我慢することになりました。
このほかにも、ウルクから望む水惑星アクエリアスというのがあって、そちらも幻想的でありながら異様な都市とのコントラストが見事です。それは次の機会で(次の機会があるといいのですが)!

55ページ 燃えるウルク

 私が特に気に入っているウルクのイラストです。この絵も当初はイメージボードと思われていました。冷たく光るコントロールタワーと猛烈に吹き出すエネルギーの威力。そして、この描き込み。タワー上層部は青白く、下層へいくと燃えるような空気に包まれる描き分け。そのウルクの岩盤から飛び出すエネルギーの力強さに見入ってしまいます。と思いつつ、確認のためにウルク戦を眺めていたら衝撃的な映像が飛び出してきました。古代達コスモタイガー隊が、コントロールタワーを爆撃するために、ほぼ垂直に降下するコクピットからの映像の、ほんの一部として使われていたのです。
 実際の映像をご覧頂くとわかりますが、殆どがコクピットの計器類で隠れています。キャノピーもこの名画としての光彩を遮る役目を担っています。さらに金田爆発がコントロールタワーの周囲で噴煙を上げているので、コクピット、噴煙の両者によって殆ど見ることが出来なくなっています。
 これが劇場クォリティーの恐ろしさです。これ程までの力を集結して作られているのが劇場版ヤマトの底力なのでしょう。
 この1枚を眺めているだけも充分に満足できるのは私だけでしょうか?
 余談ですが、復活篇の制作時にも背景美術が手前のbookで殆ど見えないというシーンを「目撃」したのを思い出します。
 ある日、いつものように制作スタジオに足を運ぶと、会議室でとある方が用紙を何枚も張り付けて大きな紙を作り、アマールの街並みの俯瞰を徹底的に描き込んでいました。いわゆる原図というやつですが、実際のアマールの街はないにも関わらず、その方の頭の中には航空写真があり、それを見ながら描き込んでいるかのごとく、丁寧且つ素早く描いていきました。
 あまりの迫力に気後れしながらも「こんなに描き込んで、もったいなくないですか?」と愚問をぶつける私に、その方はこともなげに「これが劇場用の面白いところだよ。おお!すげぇ!こんなに描いてある、でも一瞬で終わっちゃう。それが劇場用!それがいいの!」と言い放ちました。
 ここにプロとしてのプライドを見た気がしました。劇場へお金を払って見に来てくれる人を満足させるためのプロとしての意地。そのシーンは、アマールの市街地を上空から爆撃するするコクピットからの光景です。縦横無尽に動き回る爆撃機のためにかなり広範囲に背景画が描かれていることを「動き」から確認してみてください。私の記憶が正しければDC版では、短くカットされているので初期に公開された映像でご確認いただいた方が良いかも知れません。本当に画面に現れるのは実際に描かれた数分の一です。

54ページ 荒れる銀河

 黄緑とピンクの宇宙です。確かにハッブル宇宙望遠鏡から送られてくる映像の中には、綺麗なピンク色をしたガス雲が映し出されることがありますし、黄緑もありました。この絵のように1枚の絵の中に描きったのは絶妙なバランス感覚というほかありません。私的には神憑りという言葉しか浮かんできません。しかし、この絵はイメージとしてのみ使用され、実際に映像として使用されたのは、別な絵になります。ヤマトの陰でなかなか見極められませんが(しかもスキャニメイトが入っていてぼやけている!)星の位置や星の輪が違っています。

52,53ページ 完結編 創生期の太陽系

 この絵も、赤や黄色、黒のガスが渦巻くカオスな状態を描いている一枚です。この絵の魅力は混じり合う絵の具のタッチにあると思います。しかも、001-053を見ていただければ判るとおり一旦描いた惑星を消してbookとして描き直しているところがまた、驚かされるのです。実際に映像で確認しますと、惑星が微妙な速度で移動しているのです。
 当初の打ち合わせとは違い、実際にあがったラッシュを見たら、動かせないかな?という要望を受けたような気がします(最初から惑星が移動するように指示されていたら、1枚の中に描き込むことはなかったですよね?)
 「さらば~」の冒頭で描かれている太陽系の惑星も微妙な速度で移動していましたね(早送りでみるとわかりますよ)。
 なお、この背景画は、一旦イメージボードが描かれた後に本番用となりました。機会があればイメージボードもお見せできるでしょう。

50、51ページ デザリアム内部、水晶都市。

 特殊効果がなくても美しい蒼い都市の原画です。水晶都市とは甘美なネーミングですが、見た目とは裏腹に巨大ミサイルがザクザク格納されていました。破壊力は抜群でしたが誘導ミサイルでなかったのが唯一の欠点でしょうか(誘導ミサイルだったけど、近すぎて外れた?)。
 実は、印刷という作業に回すと青が再現されづらいというのが業界の常としてあります。青が沈んでしまうのです。こんなに青ばかりの絵をどうすればいいのか、もともと特殊効果があって見栄えのしていた絵ですから、印刷に回して原画の青が損なわれたらと悩みました。
 印刷所に発注する前に、全てのページをデータ化して、自身で出力し本と同じ体裁に(1枚1枚切って糊付けして)組み立てて、試作品を作りました(配置が適正か、構成バランスが良いか?を判断するためです。後日、この手作りの1冊は色々なところに旅に出ることになります)。この2ページを開いてみて「問題なし」という結論を出しました。それは、色の再現性もさることながら、ここまでデザリアムの外部ばかりが並んでいたので、バーン!と内部へ一気に入り込むことが出来たからです。
 次のページにどうしても入れたかった絵がありましたが、ページの配置の都合上、見送りました。残念無念。

49ページ デザリアム星司令部

 シネスコサイズで描かれた敵の司令部。この絵が利用された2つのシーンでは、中央のスクリーンにばかりに目がいってしまい周囲に何が描かれているのか見る気もなかったというのが正直なところではないでしょうか。ですから、この絵もイメージボードか?と思っていましたが、よくよく映画を見返してみると2つのシーンで「本当に」使われていました。絵の右上に二つのシーン・カットナンバーが書かれていますね。
 余談ですが、劇場版ヤマトは実写と同じようにシーンナンバーとカットナンバーで構成されています。今回の場合ですと、聖総統スカルダートが、ヤマトの発進を見届け、さっき見せた歴史のとおりにしてやる!と息巻くのが一つのシーンで、カメラが切り替わるのがカットナンバーということです。映画の撮影時にカチンコ(拍子木とシーンナンバーなどを書いた表がセットになったもの)を片手に「シーン74!カット45!よ~い、すたぁーっと!」っていうアレですね。「ハイ、そのままヤマト上昇!グングン!そ~っその調子!そのままどんどん上昇してぇ~」
 さらに余談ですが、復活篇は、カットナンバーのみで進み最終的に1850カットまでいきました(カットナンバーは1850ですが、例えばカットナンバーを振り終わった後に追加のカットが出てきて、35a、35b、35cのように増えたりしたので、総カット数は増減します)。正確な総カット数をしるためには、DVDなりブルーレイで、最初からカット数を数えていくことです。

48ページ デザリアム星の中心核

 デザリアム星の中心核を含めた外郭。ピンク色の透過光が秀逸で、不気味さが際だっていました。個人的にこの、何をしてもヒビすらはいらなそうな堅さ、冷たさが気に入っています。物語的には、デザリアム星が全身ハリネズミくらいに武装されていてヤマトの苦難が続けば盛り上がったかなぁという気がしないでもありません。南極の入り口のみ砲身がなくて、そこから内部へ侵入!というのは、いかがでしょうか?