65ページ アクエリアスの浮遊大陸

右上にカットナンバーが描かれていますから背景画です。ですが、ヤマトがアクエリアスの地表を航行する際に使われたのは違う絵でした。DVDで確認すると、浮遊大陸の下のゴツゴツが本書よりも激しくなっています。おとなしい感じだったのでNGになったのでしょうか。
遙か彼方にはアクエリアスのリングが見え、同じように浮いている浮遊大陸も見えます。雲は穏やかにわき上がり、春を思わせる空色は優雅であり平和です。未使用としてお蔵入りするにはもったいない1枚です。
浮遊大陸から、莫大な水量が滝となって落ちています。その水はどこからわき出て居るんだろう?と想像させてしまうところに面白さがありますね。
まさに神秘の星アクエリアスです。

さて、完全に余談ですが、この浮遊大陸と同じモノを約30年後の2009年に劇場で見ることが出来ました。ジェイムス・キャメロン監督作品「アバター」です。これには正直驚きました(もっとも浮遊大陸という考え方は古くからありました)が、雰囲気が激似でした。
おそらく私の勝手な推測で妄想で、J・キャメロン氏には迷惑な事かも知れませんが、水惑星アクエリアスの存在を完結編で知り、近傍の惑星を水没させるときに一緒に流れ出た=それが惑星パンドラ(アバターの舞台となった星の名前)なのだ!と設定したのではないでしょうか。(すみません)
(完全に私の妄想です)となるとヤマトが自沈して水柱を断ち切りはましたが、一部は地上に流れ着き、復活篇の映像のどこかで、浮遊大陸が地球上で浮いている映像を確認することができるかも可能性がありますね(嘘です。ありません。念のため)。

64ページ 冥王星基地の宇宙灯台

冥王星海戦が終わり、負傷者は地球に帰り、ヤマトは新たなる戦地へ赴く印象的なシーンです。当初描かれていた絵コンテには、ヤマトへ航海の安全と武運を祈るモールス信号が発信されていました。おそらく尺の都合で削除されたのでしょうが個人的に是非とも見たいシーンでした。
この絵は、地平線を画面と平行に描かず、左側に傾けて描いているところに構図の面白さがあります。隆起した地殻を挟んで大小のクレーターがあり、荒涼とした酷寒の大地を「ざらざら」した質感で表現しています。バックの宇宙は、透明感ある色合いで「めらかな」質感を表現していて、地表との対比が際だっています。水張りをしてしっとりと描いた宇宙空間と極限まで水気を抜いた筆の戦いともいえるでしょう。
大気がないので遙か彼方の地平線もくっきりと見える宇宙空間が見事に表現されています。
地表の水気が一切なさそうな(パート1では海があったけど)筆運びに感服です。
部屋に1枚飾っておくとお洒落な1枚ですね。

63ページ 秘密ドッグのヤマト

この1枚は勝負の1枚です。本書の存在理由にもあたります。
余白まできっちりと収録できる絶妙なバランスで配置できました。本書の解説でも書きましたが、とにかく使われた部分が少なく、全体像としては見ることができません。いくつかの書籍でも紹介されていますが、大きくじっくりと見られるのは本書が初めてではないでしょうか。右手前の桟橋部分では、長年(?)海水に浸かり生えてきた藻やこびり付いた汚れを感じさせますし、船との間につけられたライトの照り返しがうまく表現され暗いだけのドッグの中でアクセントになっています。
当時、こういった重厚感のある絵は、勝又氏の独壇場となっていましたね。
海底ドッグのシーンは何枚かありますが、見て納得できる一枚をセレクトしました。
ちなみに、今回のヤマトの桟橋へのつけ方は「出船(でふね)」と呼ばれるつけ方になります。「出船」とは、入港して桟橋につけるときに、くるっと回頭してすぐに船が出られるようにつける方法をいいます。逆に頭から入れることを「入り船(いりふね)」といいます。自動航行で帰ってきたとなると、かなり高等な技術で船を桟橋につけたことになります。
映画のシーンとしては、入り船で停泊していたのでは、出港時にお尻から出ていくのでサマになりませんよね。
よく見るとアンカーもおろしていて雰囲気を盛り上げています(001-060では両側のアンカーをおろしていますよね。こちらでは左舷のみです)。
手前にガントリーレクーンもいい感じです(001-060と位置関係を確認してください)。この巨大なガンとリークレーンは、終始背景に出てきます。
「さらば~」の時のようなドライドッグではなく、海に浮かんだままというのは、戦艦大和を意識してのことでしょうか。
「やっぱりフネは海の上だよな」と古代も言っていましたし、ヤマトが海に浮かんでいる様子は絵になります。
実際の映像では、古代がタラップを上がっていました。

62ページ デスラーズパレス

この絵の面白いところは、完全にデスラーズパレスが崩壊しているのではなく、栄華を誇っていた頃の面影が微かに残っているところにあります。
そして、鉄壁の守りを誇る外殻の無惨な姿や、都市に淡く灯った明かりは、行く末の短さをも物語っているように思います。銀河の交差のすさまじい破壊力を見せつけていて映画のつかみとしては、最高の演出でした。ただこの銀河の崩壊も、デスラー総統が終盤で登場する件にしか活かされていなかったのが残念です。地球水没時の演出として使えれば良かったのですが。

この絵を初めて手にしたとき「(手前の外殻が書かれているセル画が)汚れてるな」と思いました。撮影時に汚れは極力落としたのですが、うまく落とせずそのまま重ねて撮りました。ですから、下に描かれているデスラーズパレスとその城下町(?)がくすんでしまうなとあきらめていましたが、カメラマンの腕が良く鮮やかに再現されているのを見てホットしました。外殻は、別に撮影して「ご自身で配置して欲しい」としても良かったのですが、ページの都合上載せたままになっています。外殻を外してみる朽ち果てたデスラーズパレスもなかなかの味わいです。

余談ですが、この絵の撮影後に判ったことがあります。撮影をする前は、毛のついたハタキのようなもので埃を取っていました。イメージボードや背景画にはこれでいいのですがセル画でこれをやると傷が付いてしまいます。長年セル画を保管したことのある方はわかると思いますが、表面についた当時の油分(?)や汚れ、重ねた部分のスレで透明部分が汚れてしまうことがあります。これを強引に取ろうとするとセル画に傷が付きます。
しかし、セル画を何度ゴシゴシ拭いても傷が付かない魔法のようなクロスがありました。不織布のような素材で使い捨て。小さなポケットティッシュのような形をしていて、しかも格安。元々は、カメラのレンズ等を拭くティッシュ(クロス)なのですが、効果は抜群!セル画の指紋取りやスキャナーのガラス面の汚れ取りに大活躍です。
さらに嬉しい効果が!なんと本書「Proud of YAMATO」のソフトカバーは、黒のPP加工で手に付いた油分で指紋がベタベタになりやすいのですが、このティッシュペーパーで拭くと、簡単に綺麗になります。是非ともご利用下さい。商品名は後ほど書きます。
最後に、デスラーズパレスは、デスラーパレスと設定資料に書かれていることもあります。

61ページ 父と子

ディンギルの実の親子でありながら血も涙もない(父が子供の失敗を許せず殺してしまう無慈悲さ!)関係と、血の通っていない沖田と古代ですが本当の親子のように時には厳しく時には愛情を持って接する関係を見せている完結編(ラストでは子の将来を考えて親が身代わりになって往く)で、死んだはずの沖田艦長が現れるという衝撃的なシーンです。
死んだと思われていた沖田(父親)がクルーの前に現れ(冷静に部署につけるものでしょうか?)的確に指示を出していき、最後に古代(子)へ戦闘指揮を執るよう命じます。
この絵は、いわゆる「宣材」と呼ばれるもので、宣伝用に作られたカットの中の1枚で、実際に使われたカットとは違う絵になっています。具体的には、背景、古代の立ち姿、沖田艦長と全て「似て非なるもの」となっています。是非とも本編と見比べて欲しい1枚です。
アニメ雑誌などで見ていたこの1枚は、本編から抜粋した絵ではなかったのですね。

余談ですが、「復活篇」でプロモーションDVDが限定配布されましたが、その時は、それまでに仕上がっている絵を集め、その上で必要なカットを予定より早めて作り上げてDVDにしました(プロモーションDVDに一旦は採用されたものの劇場公開版では削除された幻のシーンがありましたが、DC版で復活したカットもありました)。あとで書かせていただく機会があれば触れますが、プロモーションDVDは、プレゼントの受け付け開始後早々に予約数をうわまりそうになり、当日の夜に慌てて受付を中止しましたが(ホームページも「申し込み終了しました」の表示に変更し、受付の機能自体削除したのにも関わらず!)間に合わず、早朝まで延々と申し込みメールが届くという異常事態になりました。ヤマト人気恐るべしの一夜でした。

60ページ 地球防衛軍秘密ドッグ

なぜそうしたかはわかりませんが、ヤマトも、その横に係留されている白い船も、セル画の上に載っています。ですから、セル画を取れば無人のドッグになります。
原版だと横長のワイドで迫力のある1枚です。
この絵は真田やユキが自動航行で帰ってきたヤマトへ乗り込む前に車で駆けつけるシーンで使われました。判りづらいですが猛スピードで走り込む車が描写されています。35mm版、70mm版の両方で使われています。ヤマトの細かい部分まで描かれていますから70mm版のスタンダードサイズ(LDやVHS)でご確認いただけると思われます。
このよう海面に浮かぶヤマトを見るのは、「新たなる旅立ち」の出航前以来でしょうか?

59ページ 岩盤反重力波抽出機

おそらく中央のリングにしか目がいかなかったかと思いますが周囲の描き込みは相当なものです。
特殊効果がとても綺麗でしたね。実は、この絵は縦方向にも長いのですが上と下の(本書では白い余白となっている)部分がかなり汚れていて、お見苦しかったのでカットさせていただきましたが、おそらくご覧になられると「すごいゴミがついていますが」と苦情を受けそうなほどでした。
さて、この絵も大きいので、そこに乗っているセル画も大きいのです。よく見ていただくと理解できると思いますが、クルクル回る中央のリング(曲線反重力波増幅放電板というのかな?)の手前になる部分におへそのような突起もBOOKとして乗っているのです。
これほど大きなセル画を何枚も乗せ変えて撮影する時の苦労が忍ばれますよね。
今回は、中央のリングが緑色ですが別セルとして白色に輝くセル画もあります。

58ページ 大魔神

58ページ 大魔神
大魔神と都市衛星ウルクの絵は比較的多く保存されていていろいろなアングルから楽しめます。今回は、グリーンの光彩が際立つ1枚をセレクトしました。この絵は古代たちが潜入(乱入?)するシーンでつかわれています。保管(?)されているロボットホースが全て「白馬」なのが残念です(白馬はルガール・ド・ザール専用で1頭だけではないのでしょうか?それか権力に任せて複数頭所有なのでしょうか?)。
余談ですが、スタッフから聞いた話として『白馬の王子事件』というのがあったようです。当初、ルガール・ド・ザールも一般兵と同じ茶色のロボットホースにまたがっていたようですが、それを見た西崎プロデューサーが「これじゃだめだ。(馬を)白にしろ」とリテーク指示をだしたそうです。すこし経って白馬にまたがるルガール・ド・ザールができあがり、これを見て「これじゃ白馬の王子じゃないか!誰だ!白馬にしたのは!」と怒鳴ったとか怒鳴らなかったとか。忙しいプロデューサ家業ゆえ、自身の指示を忘れてしまったのでしょうか?
このシーンを見ると「白馬の王子」を思い出してしまいます。この絵を見る限り馬は最初から白かったような気もしないでないですね。

56、57ページ ウルクに突入するヤマト

この絵は、ポスターにLPのジャケットにと大活躍したボードです。雑誌などでもたくさん使われましたので見覚えのあるファンは多いでしょう。
今回の「Proud of YAMATO」の基本コンセプトとして、劇場公開当時、定番となっていてる図柄は使わないことにしていますが、この絵だけは別格ですから当初から採用を決定していました。とにかく大きい!その上、その大きさにかまけることなく(憑りつかれたように)どこまでも妥協することなく都市の線を一本一本丁寧に筆を入れています。丹念に描かれた都市像はまるで実在していたかのように、その威容を誇示するかのように迫ってきます。
実物をご覧になれない方のために、56ページでは、全体像を。そして、57ページでは実寸でのレイアウトに挑戦しましたが、あまりにアップになりすぎて「ここは都市の一部のようだけど、どこ?」という状態になってしまったので、あきらめて倍率をすこしあげてみました程度で我慢することになりました。
このほかにも、ウルクから望む水惑星アクエリアスというのがあって、そちらも幻想的でありながら異様な都市とのコントラストが見事です。それは次の機会で(次の機会があるといいのですが)!

55ページ 燃えるウルク

 私が特に気に入っているウルクのイラストです。この絵も当初はイメージボードと思われていました。冷たく光るコントロールタワーと猛烈に吹き出すエネルギーの威力。そして、この描き込み。タワー上層部は青白く、下層へいくと燃えるような空気に包まれる描き分け。そのウルクの岩盤から飛び出すエネルギーの力強さに見入ってしまいます。と思いつつ、確認のためにウルク戦を眺めていたら衝撃的な映像が飛び出してきました。古代達コスモタイガー隊が、コントロールタワーを爆撃するために、ほぼ垂直に降下するコクピットからの映像の、ほんの一部として使われていたのです。
 実際の映像をご覧頂くとわかりますが、殆どがコクピットの計器類で隠れています。キャノピーもこの名画としての光彩を遮る役目を担っています。さらに金田爆発がコントロールタワーの周囲で噴煙を上げているので、コクピット、噴煙の両者によって殆ど見ることが出来なくなっています。
 これが劇場クォリティーの恐ろしさです。これ程までの力を集結して作られているのが劇場版ヤマトの底力なのでしょう。
 この1枚を眺めているだけも充分に満足できるのは私だけでしょうか?
 余談ですが、復活篇の制作時にも背景美術が手前のbookで殆ど見えないというシーンを「目撃」したのを思い出します。
 ある日、いつものように制作スタジオに足を運ぶと、会議室でとある方が用紙を何枚も張り付けて大きな紙を作り、アマールの街並みの俯瞰を徹底的に描き込んでいました。いわゆる原図というやつですが、実際のアマールの街はないにも関わらず、その方の頭の中には航空写真があり、それを見ながら描き込んでいるかのごとく、丁寧且つ素早く描いていきました。
 あまりの迫力に気後れしながらも「こんなに描き込んで、もったいなくないですか?」と愚問をぶつける私に、その方はこともなげに「これが劇場用の面白いところだよ。おお!すげぇ!こんなに描いてある、でも一瞬で終わっちゃう。それが劇場用!それがいいの!」と言い放ちました。
 ここにプロとしてのプライドを見た気がしました。劇場へお金を払って見に来てくれる人を満足させるためのプロとしての意地。そのシーンは、アマールの市街地を上空から爆撃するするコクピットからの光景です。縦横無尽に動き回る爆撃機のためにかなり広範囲に背景画が描かれていることを「動き」から確認してみてください。私の記憶が正しければDC版では、短くカットされているので初期に公開された映像でご確認いただいた方が良いかも知れません。本当に画面に現れるのは実際に描かれた数分の一です。