54ページ 荒れる銀河

 黄緑とピンクの宇宙です。確かにハッブル宇宙望遠鏡から送られてくる映像の中には、綺麗なピンク色をしたガス雲が映し出されることがありますし、黄緑もありました。この絵のように1枚の絵の中に描きったのは絶妙なバランス感覚というほかありません。私的には神憑りという言葉しか浮かんできません。しかし、この絵はイメージとしてのみ使用され、実際に映像として使用されたのは、別な絵になります。ヤマトの陰でなかなか見極められませんが(しかもスキャニメイトが入っていてぼやけている!)星の位置や星の輪が違っています。

52,53ページ 完結編 創生期の太陽系

 この絵も、赤や黄色、黒のガスが渦巻くカオスな状態を描いている一枚です。この絵の魅力は混じり合う絵の具のタッチにあると思います。しかも、001-053を見ていただければ判るとおり一旦描いた惑星を消してbookとして描き直しているところがまた、驚かされるのです。実際に映像で確認しますと、惑星が微妙な速度で移動しているのです。
 当初の打ち合わせとは違い、実際にあがったラッシュを見たら、動かせないかな?という要望を受けたような気がします(最初から惑星が移動するように指示されていたら、1枚の中に描き込むことはなかったですよね?)
 「さらば~」の冒頭で描かれている太陽系の惑星も微妙な速度で移動していましたね(早送りでみるとわかりますよ)。
 なお、この背景画は、一旦イメージボードが描かれた後に本番用となりました。機会があればイメージボードもお見せできるでしょう。

50、51ページ デザリアム内部、水晶都市。

 特殊効果がなくても美しい蒼い都市の原画です。水晶都市とは甘美なネーミングですが、見た目とは裏腹に巨大ミサイルがザクザク格納されていました。破壊力は抜群でしたが誘導ミサイルでなかったのが唯一の欠点でしょうか(誘導ミサイルだったけど、近すぎて外れた?)。
 実は、印刷という作業に回すと青が再現されづらいというのが業界の常としてあります。青が沈んでしまうのです。こんなに青ばかりの絵をどうすればいいのか、もともと特殊効果があって見栄えのしていた絵ですから、印刷に回して原画の青が損なわれたらと悩みました。
 印刷所に発注する前に、全てのページをデータ化して、自身で出力し本と同じ体裁に(1枚1枚切って糊付けして)組み立てて、試作品を作りました(配置が適正か、構成バランスが良いか?を判断するためです。後日、この手作りの1冊は色々なところに旅に出ることになります)。この2ページを開いてみて「問題なし」という結論を出しました。それは、色の再現性もさることながら、ここまでデザリアムの外部ばかりが並んでいたので、バーン!と内部へ一気に入り込むことが出来たからです。
 次のページにどうしても入れたかった絵がありましたが、ページの配置の都合上、見送りました。残念無念。

49ページ デザリアム星司令部

 シネスコサイズで描かれた敵の司令部。この絵が利用された2つのシーンでは、中央のスクリーンにばかりに目がいってしまい周囲に何が描かれているのか見る気もなかったというのが正直なところではないでしょうか。ですから、この絵もイメージボードか?と思っていましたが、よくよく映画を見返してみると2つのシーンで「本当に」使われていました。絵の右上に二つのシーン・カットナンバーが書かれていますね。
 余談ですが、劇場版ヤマトは実写と同じようにシーンナンバーとカットナンバーで構成されています。今回の場合ですと、聖総統スカルダートが、ヤマトの発進を見届け、さっき見せた歴史のとおりにしてやる!と息巻くのが一つのシーンで、カメラが切り替わるのがカットナンバーということです。映画の撮影時にカチンコ(拍子木とシーンナンバーなどを書いた表がセットになったもの)を片手に「シーン74!カット45!よ~い、すたぁーっと!」っていうアレですね。「ハイ、そのままヤマト上昇!グングン!そ~っその調子!そのままどんどん上昇してぇ~」
 さらに余談ですが、復活篇は、カットナンバーのみで進み最終的に1850カットまでいきました(カットナンバーは1850ですが、例えばカットナンバーを振り終わった後に追加のカットが出てきて、35a、35b、35cのように増えたりしたので、総カット数は増減します)。正確な総カット数をしるためには、DVDなりブルーレイで、最初からカット数を数えていくことです。

48ページ デザリアム星の中心核

 デザリアム星の中心核を含めた外郭。ピンク色の透過光が秀逸で、不気味さが際だっていました。個人的にこの、何をしてもヒビすらはいらなそうな堅さ、冷たさが気に入っています。物語的には、デザリアム星が全身ハリネズミくらいに武装されていてヤマトの苦難が続けば盛り上がったかなぁという気がしないでもありません。南極の入り口のみ砲身がなくて、そこから内部へ侵入!というのは、いかがでしょうか?

46,47ページ カレンダー2種

 発売当時購入できなかった方や、使ってしまって持っていない方のため、そして絵の良さから選びました。
 「ヤマトよ永遠に」になると美術の方も新しい境地に入ったようで、重厚感がぐっと増してきます。東映動画自体も同じような路線で他作品を描いていました。うなるエアブラシに詳細な描き込み。定番でしたね。
 当然ですが、コスモタイガーに乗りこちらにピースサインを送る加藤四郎もあります。ただし、水彩画っぽくてちょっと浮いた感じがしました。いずれかの機会に。

44、45ページ 白色銀河

暗黒の銀河を抜けると、そこにはめくらめく光芒の渦巻く白色銀河広がっていた!という印象的なシーンです。その印象的なシーンをさらに効果的に演出したのが「ワープディメンション」です。ビスタサイズ(1:1.85)からシネスコサイズ(1:2.35)に変わり横幅が広くなります。この演出は凄かったですね(是非とも今度発売されるブルーレイ版では、正確に再現して欲しいです)。
さて、これほど美しい白色銀河もかなり横長の絵で、置き場所に困っているほどですので、本書でも、1ページに1枚の絵というこだわりを捨てて見開きとしました。
印刷所とも打ち合わせをして、見開き時に起きる中央部分の欠落(ページを全開にできなくて見えなくなる部分)がなくなるよう、位置調整を行いました。見開きにすると絵がちゃんとみえない、という事が起きないようにしています。

そして!本書の企画途中から「白色銀河を抜けたところでワープディメンションによりスクリーンが広がったから、それを再現できないか?」というお題が立ち上がり「再現しましょう!」と実行に移すことになりました。
これが本書の隠れたスパイス(知らない友人に自慢できるトピック)です。
最初のページから、ゆっくりと1枚1枚鑑賞していただいている貴方なら、このページを開いたときに目の前が明るくなりませんでしたか?ならなかった、と思った方は、最初の1ページ目「無限に広がる~」からゆっくりと、隅々まで眺めながらこのページまで来てください。
なぜ目の前が開けたのだろう?と思われた貴方のために種明かしをします。
絵を配置したときに、A4というくくりの中で、どうしても収まりが悪く余白が出てしまう絵があります。43ページ目までの余白は「黒く」していますが、44ページ目からは余白が「白」になるのです。
では、もう一度、最初のページからゆっくりとご覧下さい。

43ページ イカルスに眠るヤマト

とにかく暗い。印刷技術の向上により露出を上げなくても綺麗に出るようになりました。
この構図と似たカットが「復活篇」にも登場しますね。ヤマトがアクエリアスの氷塊のドッグから上昇し発進位置に着いたときです。
どちらがよいかは別にして、船というのは、このアングルから見る機会も多くかっこよく見えますね。(船を間近で見られるのはドッグに係留されているときで、その時は下から見上げることになります)
とにかく暗い絵を配置しました。その秘密は次のページで!

42ページ 燃える都市と有人機基地

当初、イメージボードだろうと考えていました。あまりに丁寧で綺麗すぎるからです。ところが劇場版クォリテー(1カットの為に描かれる背景でも徹底的に描き込まれる!)の背景画だと判ったときは、興奮しました。
この他にも都市が燃えていて手前に、例えば沖田艦長の銅像があったり英雄の丘があったりといった背景画がありますが、構図の良さと実際に使われたのが一部分だけという儚さ(?)からこの絵を選びました。
是非とも、実際の映像で確認してください。決め手は、格納庫(?)と思われる建物の手前に描かれている「A-1」というマーキングです。これがなかったらちょっと辛かったです。
とにかく、背景画の全てにいえることですが、これだけ大きく描かれているのに実際に使われるのは、一部だけという事例が多すぎて、どのシーンで使われているかという判別が難しいのです。この絵も、中央最上部にタップ穴らしきものが黄色で描き込まれているので「ひょっとしたら」と詮索するきっかけにはなりましたが、これがなかったら「イメージイラスト」で終わっていました。

40,41ページ 航路図

新たなる旅立ちの航路図です。当初「カニ星雲」だった箇所は、豪華本では黒塗りで白文字を使い「重力星雲」に、サントラではセル画に直に描いたような書体で「重力星雲」に変更されています。このように航路図は、書籍や取り上げられる媒体によっていくつかのパターンが作られていくようです。とにかく第一作目の航路図には悩まされました(笑)。
001-041の文字がない航路図は、宇宙空間に「全部入り」みたいな感じで展開されていて見ているだけで面白いですね。
余談ですが、最近の天文学での銀河系は、綺麗な渦巻き型ではなく、中心に棒状の広がりのある「棒状型銀河」ではないかと言われていますね。まぁ、銀河系を上から俯瞰するというのは現代のテクノロジーでは絶対に不可能なので、本当の姿を見るのはあきらめましょう。真実を知らない方が良かったというのは、良くある話ですから。