46,47ページ カレンダー2種

 発売当時購入できなかった方や、使ってしまって持っていない方のため、そして絵の良さから選びました。
 「ヤマトよ永遠に」になると美術の方も新しい境地に入ったようで、重厚感がぐっと増してきます。東映動画自体も同じような路線で他作品を描いていました。うなるエアブラシに詳細な描き込み。定番でしたね。
 当然ですが、コスモタイガーに乗りこちらにピースサインを送る加藤四郎もあります。ただし、水彩画っぽくてちょっと浮いた感じがしました。いずれかの機会に。

44、45ページ 白色銀河

暗黒の銀河を抜けると、そこにはめくらめく光芒の渦巻く白色銀河広がっていた!という印象的なシーンです。その印象的なシーンをさらに効果的に演出したのが「ワープディメンション」です。ビスタサイズ(1:1.85)からシネスコサイズ(1:2.35)に変わり横幅が広くなります。この演出は凄かったですね(是非とも今度発売されるブルーレイ版では、正確に再現して欲しいです)。
さて、これほど美しい白色銀河もかなり横長の絵で、置き場所に困っているほどですので、本書でも、1ページに1枚の絵というこだわりを捨てて見開きとしました。
印刷所とも打ち合わせをして、見開き時に起きる中央部分の欠落(ページを全開にできなくて見えなくなる部分)がなくなるよう、位置調整を行いました。見開きにすると絵がちゃんとみえない、という事が起きないようにしています。

そして!本書の企画途中から「白色銀河を抜けたところでワープディメンションによりスクリーンが広がったから、それを再現できないか?」というお題が立ち上がり「再現しましょう!」と実行に移すことになりました。
これが本書の隠れたスパイス(知らない友人に自慢できるトピック)です。
最初のページから、ゆっくりと1枚1枚鑑賞していただいている貴方なら、このページを開いたときに目の前が明るくなりませんでしたか?ならなかった、と思った方は、最初の1ページ目「無限に広がる~」からゆっくりと、隅々まで眺めながらこのページまで来てください。
なぜ目の前が開けたのだろう?と思われた貴方のために種明かしをします。
絵を配置したときに、A4というくくりの中で、どうしても収まりが悪く余白が出てしまう絵があります。43ページ目までの余白は「黒く」していますが、44ページ目からは余白が「白」になるのです。
では、もう一度、最初のページからゆっくりとご覧下さい。

43ページ イカルスに眠るヤマト

とにかく暗い。印刷技術の向上により露出を上げなくても綺麗に出るようになりました。
この構図と似たカットが「復活篇」にも登場しますね。ヤマトがアクエリアスの氷塊のドッグから上昇し発進位置に着いたときです。
どちらがよいかは別にして、船というのは、このアングルから見る機会も多くかっこよく見えますね。(船を間近で見られるのはドッグに係留されているときで、その時は下から見上げることになります)
とにかく暗い絵を配置しました。その秘密は次のページで!

42ページ 燃える都市と有人機基地

当初、イメージボードだろうと考えていました。あまりに丁寧で綺麗すぎるからです。ところが劇場版クォリテー(1カットの為に描かれる背景でも徹底的に描き込まれる!)の背景画だと判ったときは、興奮しました。
この他にも都市が燃えていて手前に、例えば沖田艦長の銅像があったり英雄の丘があったりといった背景画がありますが、構図の良さと実際に使われたのが一部分だけという儚さ(?)からこの絵を選びました。
是非とも、実際の映像で確認してください。決め手は、格納庫(?)と思われる建物の手前に描かれている「A-1」というマーキングです。これがなかったらちょっと辛かったです。
とにかく、背景画の全てにいえることですが、これだけ大きく描かれているのに実際に使われるのは、一部だけという事例が多すぎて、どのシーンで使われているかという判別が難しいのです。この絵も、中央最上部にタップ穴らしきものが黄色で描き込まれているので「ひょっとしたら」と詮索するきっかけにはなりましたが、これがなかったら「イメージイラスト」で終わっていました。

40,41ページ 航路図

新たなる旅立ちの航路図です。当初「カニ星雲」だった箇所は、豪華本では黒塗りで白文字を使い「重力星雲」に、サントラではセル画に直に描いたような書体で「重力星雲」に変更されています。このように航路図は、書籍や取り上げられる媒体によっていくつかのパターンが作られていくようです。とにかく第一作目の航路図には悩まされました(笑)。
001-041の文字がない航路図は、宇宙空間に「全部入り」みたいな感じで展開されていて見ているだけで面白いですね。
余談ですが、最近の天文学での銀河系は、綺麗な渦巻き型ではなく、中心に棒状の広がりのある「棒状型銀河」ではないかと言われていますね。まぁ、銀河系を上から俯瞰するというのは現代のテクノロジーでは絶対に不可能なので、本当の姿を見るのはあきらめましょう。真実を知らない方が良かったというのは、良くある話ですから。

39ページ カレンダー用デスラー総統

82年のカレンダーを購入された方、あるいはファンクラブ機関誌48号を購読された方には見覚えのある絵だと思います。しかし、スターシャがいません。
絵としては、背景のイスカンダル星とガミラス星があって、そこに大判のセル画でデスラー総統が描かれています。カレンダーや機関誌の表紙とするために左側の宇宙空間に松本氏の描かれたスターシャの絵を合成しています。この絵も未公開という事になりますね。
背景のブルーが印象的で、それを見せるためにデスラーをいれるか、入れないか悩んだ末に、001-010にも同じ構成があるので、今回はデスラーを入れることにしました。デスラーファンにはたまらない一枚でしょう。

38ページ 赤色巨星

 不気味に暗い影を落として燃える星。青く若々しく燃えていた恒星の最後だと言われています。この地でどのような戦闘があったかは、本編ではカットされてしまっていたのでわかりませんが、私達の手元にある書籍で一番詳しいのは「ひおあきら」氏のコミックでしょう。
最後の「さらば~」の項目で書きますが、「ひおあきら」氏のコミックは、早い段階の絵コンテかシナリオを基に描かれているので、映画製作の最終段階で無念のカットにより消えてしまった「未公開シーン」も描かれていたりします。
今回は、赤色巨星編(?)を参考にされるといいと思います。
この1枚の赤色巨星が主張している物語性を感じずにはいられません。

真っ赤な絵の具に真っ黒な絵の具を、水張りの乾かないうちにたっぷりと、そして勢いよく混ぜ合わせながら(そして失敗は許されない!長年の経験と適量を筆から落とせる技術!)、しかしゆっくりと力無く燃える星を静かに表現しているこの1枚は、現代のCGでは、絶対に真似の出来ない表現です。
現在の映画において、CGは万能なツールであるかのように見られがちですが、劇場で見たときの迫力を1枚の止め絵として見たときに、最初に劇場で得られた興奮を再現されることは希です。なぜならCGは動いて見せる技術であって、止め絵として見せる技術ではないからです。
この1枚を見るためだけに本書を開いても価値は見いだせると思います。

5月20日追記
CGでの表現について私なりの思いを書かせて頂きます。
CGで「絵」を作るときには、大まかに分けて二つの方法があると思います。一つは、人間がツール(絵の具でも、写真でも、パソコン上のソフトでも)を使って描いた後に、テクスチャとしてオブジェクトに貼り付ける、あるいはCGソフトに渡して目的に合わせた計算をさせて変形などのエフェクト加える方法と、もう一つは、最初から必要な計算データを与えて起こらせたい事象をパソコンに計算させる、いわゆるシミュレーターのようなソフトを使う方法です。
いずれの方法にしても、商業ベースに載せるための方法としては、作り込むほどに時間と人件費等がかかってきてしまいますし、手書きというアナログの要素を入れ込むには、結果として複雑な計算式が必要であり、完全なシミュレーションなどは不可能とまでは言えませんが、なかなか難しいものです。
それ以上に、例えば、現在10万円程度で購入できるパソコンは、アポロ計画が実行された1961年の頃のコンピューターよりも遙かに性能では上回っていますし、秋葉原で数百円で売られているパーツは、当時のハードより遙かに高性能です。しかしながら私達個人は、月に行くまでには、まだまだ高いハードルがあり実現できていません。
オーディオの世界でも、192KHz、24ビットという高性能オーディオフォーマットを手に入れ、人間の耳では聞き取ることの出来ないような音楽を聴くことも出来るようになっています。音を自在に作り出す音源も企業の努力によって高性能且つ低価格化が進んでいて、1974年に富田勲氏が「月光」を発売した時よりもシンセサイザーの能力は数百倍も上回っています。しかし……。
私自身、CGで描かれた「アート作品」を多数見てきましたし、感動もしてきました。ちょうど「さらば~」を見た頃からパソコンには興味を持ち、色々なことに挑戦し楽しんできましたからパソコンの素晴らしさも知っています。
しかし、私個人として、未だにオーディオはレコードを楽しみ、パソコンでは、古い8ビットパソコンに愛着を感じている人間であり、レコードへ針を落とす瞬間に「この儀式はCDにはあり得ないな」とつぶやいているのです。
そんな人間が、ヤマトの為に描かれたイラストボードを見て深い感激を受けたのは、目の前にある現実感=絵の具で描かれたというリアル感と、そこに宿る繊細なテクニックです。
紙の余白から感じ取れる筆の勢い、絵の具の香り。一本一本の線に筆に込められた思いを感じ取られずにはいられません。そして、インターネットなどによって簡単に得られてしまう情報も当時は手探りで見つけだし、アイディアを詰め込んで描かれた「絵」が持つアイデンティティーは何物にも代え難いものです。
本書に選ばれた絵は、そんな基準もあったりします。

37ページ デスラー機雷

見る人が、ほぼ全員!驚嘆の声を上げる1枚です。
まず、絵が大きい。
そこへ、人間業とは思えないほどの量のデスラー機雷を描き込んでいます。
CG全盛期の現在なら、デスラー機雷のモデルを一つ。それを大量にコピーして、向きをランダムにして出力すれば画面いっぱいのデスラー機雷が、あっという間に出来上がります。
ところが、全部、手描き。
すごいです。
ず~っと見ていても飽きません。
さらに、よく見れば、戦闘空母の位置が悪かったようで書き直しです。恐らく陸地にかかってしまい、構図として良くなかったのかも知れません。ということは、戦闘空母も2回描いていることになります。恐るべし。
CG全盛期の現在なら、マウスで戦闘空母をつまみ上げて、「このへんかな?」といいながら、人差し指を放せば、移動完了です。
勝又氏の気力に感服です。

36ページ 新たなる旅立ち マザータウンの海

ピンぼけで遠近感を出した使い方や、雲をプラスして見え方を変えた使い方、戦闘中であったりと、かなり使い回された背景画です。
あまりにも黄緑色の都市(?)の光彩と、海の青さ、雲の透明感が綺麗なので掲載に至りました。
中央右寄りに折れ目が付いていますが、修正はしませんでした。
とあるアイドルグループの水着写真の修整写真がネットで公開され話題となっていましたね。恐らくアドビ社のフォトショップを使っているのだろうという噂が流れていました。実は、この書籍を作るにあたって基本的な作業はフォトショップで行いましたので、この手の折れ線なら撮影後に修正するのは簡単なのですが、30年以上前の背景画です。時間の流れを消してしまいそうだったので、やめることのしました。
(余談ですが、私の不手際で折ったわけではありませんので)

35ページ 英雄の丘

本編では、陽光の反射は、透過光処理でした。また、沖田艦長の後ろにあるモニュメントのトップが輝いていました。
眺望も良く、休日には家族連れでにぎわいそうな公園です。
「永遠に」では、メインクルーが階段を上って上がってくる様子が描写されていますが、「さらば~」の段階では未整備のようです。
宇宙ものの背景が多く、青かったり暗くなりがちな本書ですが、このように「赤」をメインにした「絵」が入ることにより見え方も変わってきますね。