SOUND ALMANAC「1974-I 宇宙戦艦ヤマト BGM集」

コロムビアが SOUND ALMANAC シリーズ 第1期として発売する「1974-I 宇宙戦艦ヤマト BGM集」COCX-37381 ¥2,625(税込)のジャケット(両面)にて 「PROUD OF YAMATO」 から 2枚の原画が使用されています。
「PROUD OF YAMATO」 001-003ページ「赤い地表」、001-004ページ「艦底を見上げる」です。
「PROUD OF YAMATO」同様に原版から直接撮影した画像を使っていますから鮮明です。

このような形で、ファンの目に触れることは、本当にうれしいことです。
今後も、このSOUND ALMANACには協力をしていきますので、またお目にかかれると思います。
「PROUD OF YAMATO」同様「SOUND ALMANAC」シリーズもよろしくお願い致します。

76ページ 地球

完結編用に描かれた地球は、かなりありました。カット毎に描き変えていましたし、使用するシーン毎に(同じ絵で)複数の大きさも用意されていました(大きさを変える方法として一つの地球を写真に撮り、大きさを変えて現像し、丸く切り抜いてセルに貼り付けています)。この地球だけでも3枚ほど残っています。この地球は、地球に伸びる水柱を断ち切るために踏ん張るヤマトの背後に何度か出てきます。しかも、角度が毎回違っているという芸の細かさです。

74,75ページ 自沈するヤマト2種類

この2枚は、ポスターにパンフレット、各種書籍にと大活躍した完結編のイメージカットです。当時露出の多かったイラストボードは極力使用を避けましたが、この2枚だけは正に「完結編」の象徴的です。ヤマトが終わるんだ!という意識の中でどうしても必要な2枚でした。
これも勝負の1枚です。

73ページ 第一艦橋

あまりに端正に丁寧に全面が描かれているのでイメージボードかと考えていました。が、やはり「劇場版クォリティー」ですね。実際には中央から左半分のみを使っていました。ヤマトが2度目の出港を果たすときに洋上を航行する場面です。荒波が甲板を洗い、ヤマトのマストすら隠れてしまう大波が押し寄せる。大海原を進むヤマト。いいシーンでした。
余談ながら、復活篇の制作時には第一艦橋も3Dデータで作成されていて、どのアングルからでも作画の指示にあわせて出力されていました。実際に使用する際には、手書き(PCにグラフィックソフトで描き込む)で1カットずつ描かれていました。そのような描き方ができる現代なら、パースは前方から俯瞰した感じで、高さはこれくらいでと指示をして3Dソフトで出力させれば、オペレーターはマウスをクリックするだけですが(それなりに苦労はしますが)、完結編当時は、レイアウトを描いて、原画を描いて、それを紙に写して色を付けるという気の遠くなる作業を繰り返していました。
設定資料を見ながら全体を描いて、メーターなどの配置を整えて(手書きなのでパースが狂うとおかしな絵になってしまうから大変です)、かなりの数のメーターに色を付けていくことになります。
プロのお仕事ですから、それなりにコツというものがあるのでしょうが、画用紙に描いた鉛筆の下絵は、色をつけていくと消えていきます。(絵を斜めから見ると強く描かれた鉛筆の線は跡になっていて見ることができますが)つまりパネルに色を塗ってしまうとメーターをもう一度描かなくてはならなくなるのです。
直線で構成されたメーター類は(消失点とかパースをつける方法があって)定規で描いていくのでゆがむことはありませんが、斜めになった円で構成されたメーター類は、変にパースをつけると浮いて見えたり、潜っているように見えたりで難しいのです(その点、3DCGはPCが計算して変形させるのでパースが破綻することはありません)。
この第一艦橋の質感もさることながら、全体のパースやメーターの正確な描き込みにも注目していただければこの絵の良さがわかるでしょう。

72ページ プレ・ノア

ウルクの自爆が後方に描かれて居ています。プレ・ノア自体厚い鋼鉄に覆われた宇宙船であることが伺えます。屈強さが現れています。
「さらば~」や「永遠に」では、敵の本丸が大破するとその中からより強力な敵が登場し観客をドキドキさせる状況が続いてきましたが、完結編では、滅びゆく民族の儚さか小粒な脱出艇が出現しました。ハイパー放射ミサイルもないこの小粒の艦隊がヤマトの進路を遮ったとしても、恐怖感はなかったと思われます(完結編のコピーはかつてない強敵の出現!でしたが、それはアクエリアスの力も借りられるほどのということでしょうか?)。それゆえ最大の勝機となる要因は、ヤマトがトリチウムを満載していたことでしょう。
一応、3連装ガトリング砲が12基というおっかない武器が装備(絵をよく見るとペットボトルのキャップのギザギザに相当するところに描かれていますね)されていましたが、火を噴く間もなく朽ち果ててしまいました。
完結編用に描かれたイメージボードのどれを見ても詳細な部分まで筆が入り、色使いも独特なものを感じます。全体を通して重厚感も溢れます。くどいようですが、このイメージのまま動いてくれたら絵のデティールは相当なものになったことでしょう。
なお、プレ・ノアの正式名称は「源ディンギル型UFOプレ・ノア」であり「源」の字が「原」であることの方が多いのですが、「みなもと」のほうが人類の歴史を感じることができるので本書では「源」の表記にしました。

71ページ ディンギル帝国軍巨大戦艦

巨大戦艦です。この戦艦も70ページロボットホースで書いたように、このままのディテールで動いてくれたら、どれほど不気味で存在感があったことか。それとは対象的にハイパー放射ミサイルは、異様に大きさを表現していましたね。黒光りするボディーと怪しく光る先端部分。発射した瞬間はヤマトと同じくらいの大きさかな?とも思える程でしたが、ヤマトに突っ込んだときの小ささは「あれ?かなり小さい」と驚かされました。CG無くしてもあそこまで出来る技術があったということでしょうが、この巨大戦艦にも欲しかった演出です。実際はセルにべた塗りで、さらに動きがあまりありませんでしたから。
ちなみに先端はクルクルと回転するガトリング砲だったようですが、作画が間に合わなかったのか、動かす必要なし!と判断されたのかは不明ですが固定されたままです。(実際にもありますよね。本来なら……っていう但し書きの付くときが)

70ページ ロボットホース

しなやかに駆けめぐるロボットホース達。ヤマトの甲板上は敵味方入り乱れての接近戦になりました。その中で、ひときわ目を引いたのは白馬の王子(58ページ 大魔人参照)でしたが、山腹から勢いに任せて猛進してくるロボットホース軍団も迫力がありました。
デザイン的にも描写的にもマッシブでありこの絵のまま動いたら相当な威圧感があたと思われます。70mm版の白馬の王子様は、ルガール大神官大総統が乗馬する直前までBOOKでしたが、鞍に跨った瞬間からセル画に変わっていきました。これが現在のCGを使った演出でマッシブなまま甲板を駆け回ったら!と思いを巡らせらせてしまいます。銃撃戦にならずとも、そのまま体当たりされてもかなりのダメージを受けそうでコワイです。危うし!ヤマトクルー!(ヤマト・クルー?)

69ページ ウルク側面

ウルクを俯瞰した絵は沢山存在しています。前から、後ろから、仰ぎ見る構図まで様々です。しかしながら、このように間近で山頂まで描かれた絵はなかなか見あたりません。
元々ディンギル星は水のない星(大量の水とディンギル星の特殊な構造が災いをして星が吹き飛んでしまうほどのエネルギーが生まれた)ですから、地表は砂漠と化していた事は想像に難くないと思われます(アクエリアスと同根の人類なら生物には水が必要な気もしますが、最低限の水しかなかったのでしょう)。砂漠というよりもグランドキャニオンのようにひび割れた岩肌が剥き出しです。
そして山頂には、ディンギル星人達の拠り所であり信仰の本山であった神殿があります。地球人類(というか欧米人)の祖先という設定を如実に現していますね。

このディンギル星人の起源や最期を考えるとやるせないものがあります。アクエリアスの回遊によって水没した地球から逃れディンギル星に新天地を求めたにも関わらず、再びアクエリアスの水害にあい長く住み慣れた星が消滅してしまいます。更に、生まれ故郷の地球に戻ろうと進路を向けますが、それも果たせず。ひとえにこの民族の生き様が自己中心的であり周囲のことなど一切考えない我が儘な性格に寄るところが大きく、ある意味で自業自得なんですが。
ブッダ的な思想で古代は共存共栄を提案しますが、トチ狂った大神官大総統の手によって拒否されてしまいます。「弱い女子供など滅びて当然!」と喝破していたところで、この民族は終わっていたのかも知れませんね。ただ、最期にハイパーデスラー砲で粉砕されたのはルガール総統の近くにいた戦艦ですから、生き残りが居た可能性もあります。デスラー総統が吉備団子を差し出したことを願います。

68ページ エネルギー吸収プラント

エネルギーを吸収するプラントです。採掘ではないんですね。
やはりこの絵も「美女と野獣」と化しています。柔らかい蒼天を汚すかのように不気味な建造物がそびえ立っています。
空に浮かぶのは巻積雲(けんせきうん:上層5000m~13000mにできる)と層積雲(そうせきうん:地表付近~2000mにできる)です。なぜここで雲か?とうと、描く人にもよりますが絵の雰囲気を重視して存在するはずのない雲を描いてしまう事があるからです。映画「千と千尋」で千尋が畑の中に迷い込むと、そこはインゲン畑の中だとわかります。それはインゲンの苗は勿論、インゲンの育て方が実際に使われている方法で描かれているからです。リアリティーですね。
アクエリアスは美しく、空は晴れ渡っているとわかっていても、では実際にどんな雲が浮いているのか?ということになったとき本来は低層で発達するはずの雲が高層に描かれていたりしては興ざめです。
軌道近傍にある惑星を水没させるときは、どんよりと曇った空模様となり、最終的には雷鳴が轟く嵐になります。古代が乗組員を説得するときの状況が、まさにその時で、ヤマトの行く末も暗示していました。

空と建築物の対比が美しい1枚です。

66、67ページ アクエリアスへの眺望2種類

66ページは、カットとしては存在していますが、使われなかったセットです。アクエリアスが最初のワープをするのを確認する為にルガール・ド・ザールが立っていましたが、違うアングで描き直されています。
これらを含めて、ウルクとアクエリアスが同じフレームにはいると「美女と野獣」のようになります。音楽面でも、幻想的な水惑星アクエリアスには透き通るような女性スキャット(ボーカリーズというかもしれない)をフィーチャーした曲を使い、惑星ディンギルから脱出した都市衛星ウルクには、地の底から響いてくるような野太い男性コーラスが壮絶な歴史を歌い上げます。この対比が完結編の面白さの一つだと思います。あの上映時間の中に、敵と味方、親と子の対比を書き出しただけでも密度の濃さが伺えます。
他にも、カットナンバーがふってあるセル画や背景画がありましたが、本編で確認すると全然違っていたり、一部が違っていたりすることが多々ありました。
アクエリアスに関しては、かなりの枚数があり、例えば「宇宙に浮かぶぼんぼりのよう」といわれるシーンを表現するためのセル画が連続で残っていたりします。それれは幻想的なセル画の連続です。
67ページのイメージボードは、アクエリアスの美しさが抜きん出ている一枚です。