8,9ページ ワープ中とエネルギー伝導管

 ワープ中の計器類。
 現代なら、しっかりと描いておいて、エフェクトで、ぐにゃっと処理してしまうところでしょうが、ゆがんだ状態を描いています。そもそもワープ中に周囲がグニャグニャとゆがんで見えるという発想がすごいです。
 いわゆるレイジメーターですね。

 エネルギー伝導管。
 徳川機関長が「エネルギー伝導管が溶けて折れています!」と叫ぶんですが、これって波動エンジンじゃん?と思われた方も少なくないと思います。私も、そう思いました。
 大きさ的には、波動エンジンほどですよね。近くにいた機関士たちも小さく見えたし。
 でも、溶けているのは「エネルギー伝導管」なんですね。だからといって、設定資料を引っ張り出して「どこだろうかぁ?」なんて探すのは野暮ってもんですね。
 色味も綺麗だし、正常じゃない状態の波動エンジン……おっと、間違えた。正常じゃないエネルギー伝導管の登場回数は少ないので、今回は、掲載となりました。
 この2枚は、通常(?)の大きさでB4程度です。
 

6,7ページ ヤマトイメージ

 この2つのヤマトは、プレスシートやパイロットフィルムで見ることが出来ました。
 絵のサイズは、75cm×50cmもの大きさがあります。
 A2を切っています。
 この絵が描かれたのは、パイロットフィルムが作られた頃ですから74年の8月前ということになります。
 よく見ていただくと2番主砲、1番副砲、尾翼の長さが短く描き直されているのがわかると思います。こだわりますね。
 セルの上に、紙に描いた内部を載せてバリエーションを持たせています。

 この絵を見ても、お金をかけているなぁと感じさせられます。
 (お金がなかったから、企画書は10冊しか作れなかったということですが、大事なところにはお金をかけるんですね。これは大事なことです)
 この2枚の絵を見て(特に背景)何か気づきませんでしたか?

4、5ページ 艦底を見上げる

 ヤマトの艦底を見上げる3人と1体。
 この絵も必要以上に大きく、驚かされました。
 そもそも、これだけの情報量を描ききるためには、そうとう大きな紙が
必要となりますが、テレビで見ているときには、そんなことを意識しませんでした。
 筆の細さにも限界はありますからね。
 だから、あれだけのビルを描き込もうとすると必然的に大きな紙が必要と
なるのでしょう。また、その上に乗る人物のセル画も大きいのです。
 余談ですが、セルを載せたときと、外したときでは色味が若干変わってくるのがわかるでしょうか。
 ちなみに、セル画が2枚重なっているときに3枚目を重ねようとすると、突然、画面の色が
変わってしまうので、それを見越して最初の2枚の時に何も描かれていないセル画を重ねておきます。
これを「から(空)セル」というのだそうです。
 デジタル全盛の今では、考えられませんね。
 
 

3ページ目 赤い地表

 地球が赤く焼けて、クレーターが剥き出しなんです。
 確かに、月を見れば隕石が衝突すればクレーターが出来て、ボコボコに
なることはわかります。
 それが、地球に出来ている。しかも、原子爆弾の何十倍も破壊力を持つ「遊星爆弾」で
地表は焼き尽くされ、放射能が充満している。
 すごい発想力です。
 それを絵にしたのも凄いことです。 
 地表がひび割れています。
 この状況を「無」から考えだし、イメージして、「絵」にすることは、かなり難しいと
思われます。しかも、妙にリアルです。地表が茶色というか赤っぽいイメージは、
どうして出来上がったのでしょう。火星には水がなくて赤く見えるから?地表が焼き尽くされたから?
 地球上で、地表といえば、例えば砂漠ならベージュ色ですよね(中森明菜さんの「サンド・ベージュ 砂漠へ」は、ベージュ色って事から付けられていますよね)。火山地帯だと、溶岩の冷めたような色ですから黒っぽい色になります。火事のあとは灰が多くなりますからグレーっぽい色です。
 なぜ、こんな色を創造したのでしょうか?
 この絵は、TVシリーズだとエンディングで「あの娘がふっていた~」のあたりで出てきます。
 映画でも冒頭で出てきます。
 この地表の「絵」は、もう一枚あります。別な場所と思われます。それも、また味があります。
 映画や、テレビでは、すごく赤茶けて見えますが、実際の絵は黄色とオレンジに近い近い色です。これも驚きです。
 この2ページを見ていただいたときに、川島和子さんのスキャットが頭の中で聞こえてきませんでしたか?

2ページ目 ナレーション

 第1作目の映画の冒頭で使われたナレーションです。
 やはり、ヤマトはこれで始まらなくてはいけません。

 本書の絵は映画を見ているような気持ちになれるようにストーリー順にしました。
 ページをめくると、あの初めてみたヤマトの感動を味わえるように。
 本をめくっていくと、ヤマトの名シーンを一つづつ味わえるように、映画を見ていた頃を
鮮明に思い出せるようにと考えました。
 あのシーンは、こんな風に見えていたけど実は、こんな描き込みがあったんだ!
等など思いを巡らせて貰えたらと嬉しいです。
 最後のページにたどり着く頃には「見終わった」と思えるような構成を狙いました。
 ただ、最後で「終わった」と思うだけでなく、何か希望というか
明日から頑張ろう!って思えるような配置を考えました。
 ですから、ゆっくりと、味わって、1枚1枚の絵をかみしめて、パラパラ飛ばさず、
最初から、最後まで一気に見終わってください。

 最後のページ(p100)は「ヤマト発進!」ですが、英語の解説を読んでいただくと、
その趣旨が鮮明に現れています。英訳を担当された方に悩んでいただきましたので。
 素敵な英訳だと思います。

 この次のアーティクルから絵の解説の補説を始めます。
 なぜこの絵を選んだのか、どの辺が面白いのか?等など、私のつたない文章から
何かしら感じ取っていただければと思います。
 私が初めて絵を手にしたときの感動が伝えられるように頑張ります。

1ページ目 表紙

 
 小さい頃から家にはクラシックレコードがありました。
 ですから、クラシックレコードのジャケットをよく見ていました。
 飾り罫のあるライナーノート。
 ヨーロッパの伝統ある書物には、かならずつけられていますよね。
 本当は、もっと曲線を多用した線を入れたかったのですが、今回は、
 極力「シンプル」をテーマにしましたので、抑えました。
 今度、機会があったら、派手に、ゴージャスにやりたいです。

 なぜ、シンプルをテーマにしたかといえば、絵の横についている
オマケ的なデザインが、本来、見せようとしている「絵」=「アート作品」を
スポイルしてしまうからです。
 人は、ページの中で構成されている要素をすべてみようとします。
 それは、自然なことです。
 しかし、絵の横に、なんらかのデザインが施されていると、気が散ってしまうのです。
 ですから、私は、余計な解説は絵の近くに置かず、実はページ番号すら入れたくは
なかったほど、シンプルさを追求したかったのです。
 ただ、ページ番号がないと、解説を読むときに不便だし最低限のマナーとして
入れることにしました。

 それに、理由は、もう一つ。
 私が、コレクションを開いたときに、大小を問わず現れたイメージボードや
 背景画には、説明も、ページ数も、解説もなにもなかったのです。
 頭の中で、この絵は、このシーンで、誰が描いてということは思い浮かびましたが
 「絵」以外のものは、なにもなかったのです。
 同じプレーンな状態で見て貰えたら、という趣旨もあります。
 巻末にある解説で、どのシーンで使われた「絵」かぐらいはわかるようにしておき
ましたので、参考にしてください。
 ※巻末の解説の部分については、別な機会で解説の解説をします。

本の体裁

 本の体裁は、代々伝わる豪華本のイメージで作りました。
 持って重くて、中のページを大切に保護してくれる「上製本」です。

 手に持つと指紋が付いてしまうほどの光沢感。
 タイトル部分は、箔押しという金箔を張り付けた製法で、最近の技術向上に
より剥がれることはないそうです。また製本時も、コンピューターの管理により
1ページ1ページチェックが入れられ、乱丁、落丁は起きないそうです。
 恐るべしデジタル化ですね。
 
 当初は、B4で製本しようと考えました。
 背景画やイメージボードはA判が多いのですが、絵にあわせて
切ってあったりするので、B判でも収まりは良いのです。
 ただし!これをやるには、相当な財力がないとできないことが
わかりました。詳細は「印刷」の項目で書きます。
 周囲からも、相当な勢いで止められました。
 でもね、と私は思いました。
 この本に収められた絵の数々は、筆舌に難いほどの大きさなのです。
 それをファンの方々に、なんとかそのままの形でお届けしたい!と
願って様々な方策を検討したのですが。次回の重要案件として保留です。

 ファンの方々にお見せするにあたり、まずは、価格設定から始めました。
 この本を買うのは当然、当時からファンである人達です。 
 まぁ、社会的に地位のある人達もいるでしょうけど、子供も居て
 生活にそこそこのゆとりはあるかも知れないけど、余計な出費は
抑えなくちゃいけない人達が買うのではないかなと考えたのです。
 ならば、せめてCD1枚と同じくらいの値段なら出せるんじゃ
ないのかなと。
広く多くの人に見てもらいたいのですから、作ったけど高すぎて
買えないんですけどなんて言われたら元も子もないので。

 通常、商品の価格は原価から考えられます。
 そうすると、作り手の都合で価格が決められてしまうのであって
それを欲しいと考えるファンが、買えるのか?買えないのか?は
二の次になってしまうのです。
 (その良い例が、とあるオフィシャルの出した5万円の豪華本でしょう)

 私は、この本は、多くのファンの人にみて欲しいので、その人達が買えそうな
値段から決めていったのです。
 実際、郊外型の大手販売店は、対象顧客の年齢から購入できる
金額を算出し、そこから逆算して原価を決めて商品を企画しています。

 私も、それに習ったのですが、失敗したかも知れません。
 売価を決めて、それに見合った原価を出そうとしたのですが、
何を、どんな風にあがいても原価は、下がらなかったのです。
 
 ですから、俗に言う「薄利多売」状態です。
 余談ですが薄利も怪しいです。

 それでも、当初思い描いていた、重厚感のある本を作り、多くの
方に見て貰いたいという目標は達成できました。
 というか達成させてしまいました。
 本書をお手にとられましたら、是非、そのあたりも見て戴けたらと思います。
 

本のタイトル

 Proud of YAMATO というタイトルは実に魅力的だと自負しております。
 もうだいぶ前のことになりますが、華原朋美さんの3枚目のシングルにして
初のミリオンヒット曲が I’m proud だったと記憶しています。

 プラウドって、どんな意味だったっけ?と調べたのがことの始まりです。
 歌詞の意味は「今、恋人を愛する自分を誇りに思える」的なものだった
と思います。
 飛ぶ鳥を落とす勢いの小室氏の刺激的なメロディーとリズム。
 説明口調っぽい歌詞と、これまたゴージャスなプロモーションビデオ。
 かっこよかった。
 職場の休憩時間にずっと聞いていた、この曲。
 だから、いつかは、「Proud」って言葉を使ってみたいなって思っていました。

 化粧品の名前でも「Proud」ってあったと思います。
 高級感溢れるイメージ、誇り高き言葉なのですね。

 ですから作品を作るときのタイトルは、この「Proud」をメインにしてみようと
決めていたわけです。もう16年くらい前から?かな。
 
 私は、第1作目をリアルタイムで見た世代です。
 ずっと宇宙戦艦ヤマトばかり見ていました。
 いろんな事があったけど、ヤマトを好きで良かったなと思うことが
沢山ありました。
 ヤマトを好きだ!ということを誇りに思ってるから、
 I’m proud of YAMATO !
 なんです。

 そんな意味を込めて Proud of YAMATO と命名しました。